文化逍遥。

良質な文化の紹介。

額田勲著『孤独死―被災地神戸で考える人間の復興』1999年岩波書店

2016年05月03日 | 本と雑誌
 熊本で地震が発生してから半月が過ぎた。家屋の全・半壊合わせて5000棟とも言われている。住む家を失い、現在避難所にいる人達は、これからアパートや仮設住宅などに住まうことになるだろう。
 今回読んだのは、1995年の阪神淡路大震災後の仮設住宅で医療に当たった医師の著述になる本。東日本大震災でも、仮設住宅におけるアルコール依存など深刻な問題を抱えて亡くなった人も多かったと報道されていた。この本は、仮設住宅における病気そして死に向き合った現場の声とも言えるが、その「現場」の深刻さには愕然とさせられた。災害などで目の前で大切な人を失うこと、あるいは貧困がいかにその人の心に大きな負担をかけるのか、「自分が死ぬべきだった」、「生きている価値の無い自分が生き残ってしまった」と自らを責める中で、心は病みそして体も病んでいった人達も多かったのだ。それは他人事では無い。いつ、自分自身や周囲の人が専門家によるサポートでさえも受け付けない状態になるかもしれない。その時どう対処すべきなのか、無力ながら、このような本を読む中で考えておくのも無駄ではないだろう。
 
 首都直下地震が起きるのも時間の問題と言われている。今回の九州の地震では市役所などが損壊して立ち入りできない市町村も出ている。その後の報道機関の調査では、関東でも20%程の庁舎が震度7程度の地震で危険とでている。そんな状況下、2020年開催予定のオリンピックに浮かれている首都東京で直下地震に襲われたらどうなるか・・・おそらく被害が大きいだけでなく、行政機能が停滞し、最悪の場合、餓死者が出かねない。「他人事」と思っていることは、自滅の道を行くことになる。

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