文化逍遥。

良質な文化の紹介。

大西暢夫著『津波の夜に―3・11の記憶』2013小学館刊

2016年07月08日 | 本と雑誌
 最近、図書館で借りて読んだ本の中から印象に残った一冊。著者はフリーのカメラマンで、著作も多い。この本は、東北への支援活動の傍ら取材した人達の震災後1~2年たってからのインタビュー記録となっている。

 この本を読むと、命が助かった人の多くに共通しているのが「偶然」であったことに驚かされる。避難所やそこに向かう途上で、たまたま流れ着いたり、何かにしがみついたりと、偶然に命拾いしたとしか言えない人が多かったらしい。この本は、つまるところ運良く助かった人たちの証言と写真で構成されている。しかし、そうして助かった人たちの「生」もまた辛く厳しいものがある。眼前で家族や知人友人が亡くなり、あるいはその亡骸を見ながら生活の再建をしなければならない。仮に自分だったら心のバランスを保てるだろうか、と思う。写真に関しは、さすがはプロのカメラマン。写真そのものもさることながら、シャッターを切るのが辛いと思われる人や津波の傷跡をしっかりとした構図と、的確な光を捉えて撮っている。

 

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