文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2016年アメリカ映画『Loving ラビング』

2017年03月10日 | 映画
 3/9(木)、千葉劇場にて。実話をもとにした作品。監督・脚本は、ジェフ・ニコルズ。



 1958年、異人種間の結婚がまだ違法だった頃のアメリカ合衆国バージニア州。レンガ積みを生業とする素朴な白人の青年リチャード、彼は黒人の恋人ミルドレッドをごく自然に愛し、彼女は妊娠する。それを機に二人は結婚が許されているワシントンD・Cに行き、密かに結婚届を出し、証明書を得る。しかし、それが保安官の知るところとなり、二人は逮捕拘束されてしまう。ワシントンD・Cで得た結婚届証明書はバージニア州では無効とされたのだった。そして裁判。判決は、司法取引により、いったん有罪となるが執行猶予が25年間の州追放となる。やむなく、二人はワシントンD・Cに住むことになるが・・・。
 歴史的にバージニア州は、南北戦争で南軍に属していたが、それでも深南部のミシシッピーやアラバマなどに比べればまだ差別は緩やかだったのだろうか。あるいは、映画では抑制されて描かれていたのか。リンチなどの暴力的なシーンは出てこなかった。公民権運動といわれる黒人の権利が主張された時代。混乱の中、非暴力運動を主導したM・キング牧師が1969年に暗殺される。そんな時代背景の中、静かなラブストーリーとも言える映画だった。主演の二人、ジョエル・エドガートンとルース・ネッガの演技が心に残った。


 1958年と云えば、わたしは1歳。その頃のアメリカ社会の混乱、それは生まれる前のことではないのに現実としてなかなか実感できない。あるいは「合衆国」ということの意味、つまりは、各州が独立しており法律は各州で決めるということ。その法律が合衆国憲法に反するかどうかは、告訴されてから連邦の最高裁判所に判断が委ねられることになる。バージニア州は、現在の人口は600万人ほどらしい。わたしの住む千葉県と比べ、面積は別として、人口はあまり変わらないわけだ。アメリカ社会の複雑さを考えさせられる映画でもある。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする