今回の芥川賞受賞作の火花のもうひとつの方です。
このもうひとつの方という言われ方で日陰者の扱いのよう
ですが、内容と文体や構成など質としてはなぜ今回受賞作が
ふたつなのかの意味を知る所となっているようにも感じます。
まず感じるのは非正規雇用といわれる人々が40%を超え、
日本の将来の社会保障制度や国民皆保険などの社会制度が
この先維持できるのかという懸念を生んでいます。
そればかりか、人口減や高齢化社会など社会の持つダイナミズム
がそがれ日本がどんどん斜陽化していく近未来をえが描く人が
多くなっています。
増える医療費や介護問題にどんな解決策や対応策があるのか、
向き合う人達に今潜む問題点と現代の社会構造にこの小説は
スクラップアンドビルドで人生が動いていくさまをまざまざと
見せてくれたように思います。
そこに新しい活力を見出すとか新しい形を感じるという事より、
自身の再生と老人との接し方にも変化があるというひとつの
モデルケースを通して現代を透過するという事がテーマだと
思います。
しかし、実際に我々が考えるべきことは様々なチューブや機械
につながれて生きる老人に対してどんなことができるのか。
人の人生と生きる目的や価値という本質を問うものが潜んでいる
ところに社会問題として解決すべき諸問題が重く立ちはだかる
のです。
先進国の中には安楽死を認める国が現れています。
そして問われるのは人間の終わり方です。
ただ楽に死にたいからの安楽死なのか、現在の日本の老人介護や
寝たきりの老人や介護施設の不足や介護スタッフの不足など
死にまつわる今後の問題に我々ひとりひとりが答えを見つける
ことが真のスクラップアンドビルドとなるのでしょう。