芥川賞受賞という事で読んでみました。
同時受賞の『スクラップアンドビルド』があることから、この
本の意味というか受賞価値が自ずと感じられます。
なぜ芸人として完全に破滅に至る話か売れていくが新たな狂気に
陥ってしまうなど型としてはあるはずなのにあえて中途半端な数多
いる食えるか食えないかの芸人の話にしたかのかという疑問が
沸きます。
これはやはりこの本に出てくる諸々のイメージがどこか借り物というか
何処かで見た物語だったりにダブるのはいまいち鮮烈な読書体験に
至らない原因なのかと思います。
もっとこの人の話を聞きたいとかこの不思議な世界に浸かりたいという
ものもなく、どこかで聞いたような話の中でリズム感の悪い文章を
我慢して読んで行っても結局あまり面白くならずに終わったという
本でした。
尊敬する先輩はもっと破綻に満ちていてもいいし、その才能がある
という尊敬に値する人物なら終わり方として借金まみれになっても
臓器を売りそれをテレビで話して人気者になるとかの方がリアルで
物語が浮かび上がってくると思います。
そのような事例が所々にあり、まあ、そういうことかという受賞作
なのだと思いました。
この本の受賞の直後、太宰治が佐藤春夫に宛てた書簡が発見された
というニュースがありました。
芥川賞受賞を懇願する内容という中身の紹介があり、昭和を代表し
誰もが知る作家で今でもファンの多いあの太宰にしてもこれだけ
受賞にこだわっていたのかと思わせるこの事件と漫才師の受賞は
どうしても相反する行為のような思いにさせる作品のできだと
思いました。