二日目も晴天で寒い日でした。夜は雪だったらしく、堅いカリカリの雪の上に新雪がわずかに乗るという誰も踏んでいない斜面を滑る気持ちの良い朝の後はもう難易度の下がった草津ではもはややることはない感じがします。本白根の壁も青葉山も前来た時にはブッシュや岩がところどころ出ていたのが、すっかり見えなくなりどこも皆踏まれて堅く締まっています。こうなるとこぶもなく堅い氷の様な斜面ばかりであっという間に滑れてしまい筋力もいらずいくらでも滑れるのですが、それだとただ移動しているだけの様な感覚に陥り前回来て何を目指していたのかもぼんやりとしてしまう感じでした。それでもこんな斜面でどんな滑り方をみんなしているのかとリフトから観察していると私が以前陥った感覚と同じ滑りなのに気が付きます。スピードの出る凍った斜面では出だしの斜度のある部分をいかに滑るかが重要で、スピードをつけて最初から大きく滑り出すとただその勢いで最後まで適当に滑ってしまい何の練習にもならないのです。特に出だしは重要でここをいかにコントロールできるかで小回りの精度なり、ターンの精度なりの練習と感覚がつかめます。そんなことを思いつつ一日過ごし、リフトも終わりに近づいたので一番下のまで降りて最後は納得いくまで天狗の壁を滑ってみようと思いました。いつもべちゃべちゃか凍っているかのこの斜面は難易度が高く、いいコンデションで練習できる感じでもありません。特に凍ったこぶの斜面では全く歯が立たずいつも敬遠していました。まだ、雪が十分ついておらずあちこちでブッシュや土が出ておりコース取りも難しくコブもそろってついていません。いつもできるコブラインのところもまだコブになっておらず、唯一まっすぐ降りられるだけの雪付きがあります。コブがないとあまり斜度も感じずこれなら練習できると出だしの滑り出しを気を付けて小刻みに刻むことを心して降りたところ最初に入れた板が斜面をかまずにつるりと滑り背中から斜面に落ちました。そのまま数メートル落ちて止まりませんでした。あれ止まらないと思っていると凸凹に頭やら腰が当たり体が弾みだしたのでこれは危険だと感じだしたころやっと止まりました。こんな長く滑落したのは初心者の頃いきなり上級者コースに連れていかれて落ちた経験以来のことです。しかも今回は凍った斜面で堅く急な斜面であり、いつも滑っているところで完全になめていたのと最後の方で筋力が思ったより落ちていたということで不意を突かれて落ちてしまったのでしょう。これは気持ちにもプライドにも打撃を与えもう一度天狗の壁に真摯に取り組まなくてはならないという気持ちにさせました。いつも後回しにしてきたものが越えなくてはならないものに感じました。今度来るときには気持も体力も満タンのうちに再挑戦しようと誓い口惜しさとみじめさを抱きながら温泉に向かいました。
年末以来また大雪警報が出ていた後の草津でまたあの新雪が滑れるかと期待しましたが、草津はやはり太平洋側であり良い天気でした。あの新雪もどこも皆堅くカリカリの斜面に変わっていました。そうすると難易度もぐっと下がり面白みも減ります。本白根の壁も新雪はなく、もはや誰もはまって動けなくなるようなこともなく、無謀に上級者専用の表示を無視した者が板を外して下まで転倒していく以外はいつも人気のない斜面でした。そもそも朝高速に乗った時から車も少なく、草津も人気がなく暮れの人出はなく、居るのは自衛隊の迷彩服と共済会のビブを付けた団体くらいでガラガラでした。まあそんなのも気にならずガラガラならより滑りやすいし私が滑った本白根や青葉山はいつも混むときにも人は少ないのです。ただ雪が変わるとこうも面白みがなくなるのかという感じはして、最初は珍しく動いていた本白根第二ロマンスリフトに乗り、天気のよさと展望を楽しむことにしました。観光営業ということで、板を付けての乗車はできず、風の強い中リフトに乗るといつもの志賀や万座の方までよく見えました。そうして思うことは前回来て宿で読んだ『土の記』です。この本は楽しみにちょびちょびと読んでいますが、スキー宿ではテレビも見ず、ひとりの時間を堪能すべくこの本を持ってきて読んだところ丁度主人公が昔を思い起こすシーンに妻が火山を見たいからというので阿蘇に行ったことを思い出し、初めて見た火山に興奮したことを思い出し、かつ以前草津に行って火山はもう見ているはずだと気が付き疑念を抱くのですが、阿蘇にしろ草津にしろ噴煙をモクモクと出す火山ではなく、噴煙を吐きその山の威容を感じるならその手前に浅間山の方が上であり、草津にしろ阿蘇にしろ火口の後のカルデラ湖は見えるものの白煙を吐く火山を見たいという要望の山ではないという違和感が残りました。そんなこともあり、昨年から解禁になり、火口付近にも行けるようになった草津でも火山の持つ魅力として近づくものとは違う地球離れした風景があるもののその表現がないままの描写はこの本の価値まで左右しかねない疑念を抱かせました。そんなこともあり、本白根の上からいくつもある火口の山を眺めてみようと思ったのです。いつかは山スキーで火口まで行こうと思いつつそれはいつか条件の良い日に果たそうととってあるプランでもあります。それをうえからながめてあの斜面を滑ったらとかあの山の上からカルデラ湖が見えるんだろうなとか想像と土の記になぜ草津が出てきたのかと思いをはせるのでした。降りてから本格的に滑り出して改めて今日履いたいつもの板の威力を感じつつ、前回は小回り板で苦労した斜面も難なく降りられ自由自在にコース取りできる操作性の良さも再認識しました。前回なぜこちらにしなかったかとつくづく思い堅いつまらない斜面にこうも面白さがなくなるものかと鼻白みながら滑りを終えました。宿はまた今回も一人なのでいつもの桜井やヴィレッジでなく、ルーパン山田という小さな宿です。ここは場所はヴィレッジの手前にあるのは知っていましたが、何度通っても入口が解らずどこに車を止めてどこから入るのだろうと思っていました。小さい宿の一番困るのはやはり設備でペンションなどは皆安普請で洒落た外観や装飾のわりに基本性能が低くどこも寒いのです。バブル期に建てられて豪奢なつくりとスキー乾燥室と露天風呂などを持つものもたまにありますが、予約が面倒だったり人が煩わしかったりとなかなか良いところはないのです。それにペンションでもホテルでも料金に差はなく、平日ならホテルの方が安いことが多々あります。それも二人以上の場合であり、ひとりだと割高になります。今回は朝食付き8000円と高く、二人なら食事が付いて泊まれる宿がいくつもあります。まあ一人でも取れるだけありがたいと割り切り、入ってみると今回の宿は小さい割に設備もちゃんとしていてなりよりありがたかったのは部屋が明るいことです。ふつう高級宿だと間接照明で読書などできる光量がなくがっかりするのですが今回は申し分もなく部屋はツインでゆったり使えました。さらに当たり前なのですが、明日帰りに風呂だけ入りに来たいと告げてもどうぞどうぞという対応でしばらくなかった対応が余計当たり前なんだけどありがたい感じがしました。風呂に行くとやたらと行きかう人があいさつしてくるのです。でも相手が明らかに誰かと間違ってあれという顔をするので勘違いでここで行き会う人はみんな知り合いの常連なのだろうと思います。何しろ泊り客は私一人らしいのに車はほぼ満車で止めずらい感じでした。草津だと夕食をとる場所はたくさんあるものの、一人で車で行くとなると面倒で探すのもスキーの後で疲れているので寒い中歩きまわるのは苦痛です。湯沢なんかだと車もゆったり置けて店もまとまっているのでよいのですが、ひとりだと楽しさもなくただ腹だけ満たせばよいとなってしまい本来楽しい夕食も宿で出ないと不便です。お風呂は前回と同じ万代鉱らしく珍しさもないものの温度と浴感はいつもながら申し分ありません。宿では寝るだけでひたすら寝て朝五時ごろ目が覚めもう一度風呂に行くというパターンです。
秩父地方に雪が降るのは例年クリスマスの頃に初雪、成人式の時に根雪が降り、それが節分まで融けないというのが大体のパターンでした。関東側なので回数は少ないのですが、降ると融けないという特長があります。ただ、今年はそれが降る時期は同じもののその時に雨となり、まだ平地で雪をまともに見ていない感じです。それでも、早くから寒波はやってきて寒さは例年以上な感じです。毎週寒波が来て毎週雪が降っている感じの年もありまるで雪国のような感じの年もありますがカラカラに乾燥して寒いというのが秩父です。それを利用して吊るし柿や干し芋などの特産品があります。そんな秩父の冬の味覚とはあったかいおッ切込みとかけんちん汁とか地酒酒粕の甘酒もおいしいです。寒さが育てるものは野菜の甘味だったり水であったり、寒仕込みの酒であったりします。同様に大粒の深煎り豆はより甘みを増すという特長があるのですが、あまり知られていません。特にケニアやインドネシア豆で感じやすく、昨今減り続ける大粒の良質豆を深煎りでこの時期十分味わっていただきたいとのことで例年ケニアの豆をご紹介し、冬の醍醐味を堪能するというのを顕彰しているのですが、ケニアの良質豆は大変入手困難になり、インドネシアも高値と大粒豆の入手が困難になりつつあり、環境は悪くなる一方なのです。ぜひこの冬のケニアをより多くの人に堪能してもらいたいと今月もケニアレッドマウンテンの特売を継続することにいたしました。200g1600円となっておりますが、この価格での販売はもう最後になり、為替も円安傾向が続くでしょうから珈琲豆の高値は続くと思われます。となれば安くて味のいいものを特選していく努力がより求められると考え今年も臨む所存です。それは世の評判とか大手の宣伝しない豆で味本位で選ばれる実力豆ばかりです。コンテスト豆やカップオブエクセレンスなどはなくてもレギュラーもスペシャルティも同じ土俵で評価して希少性などというフィルターなしで味本位で選んでいくスタイルはより鮮明とし、季節感を大事にし今何を飲めばよいかという提案をしていきます。本年もよろしくお願いいたします。
明けましておめでとうございます。
今月の季節のブレンドは『雅』です。
新年のスタートにふさわしいフルーティで華やかな味となっています。
このブレンドをお供に寒い季節を味わい深いものにしてください。