蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

林 芙美子  (bon)

2020-06-28 | 日々雑感、散策、旅行

 あの『放浪記』の 林芙美子は、昭和26年(1951年)の今日、6月28日に47歳の
若さで亡く
なっているのですね。

 林芙美子といえば、「放浪記」ですが、私は、テレビの映画か何かで見ただけで、
そのほかの小説なども何も読んでいませんので、これまで、ほとんど気に留める
こともありませんでしたが、たまたま今日が命日にあたるというので、ネットを
繰ってみました。

      林芙美子
       (ウイキペディアより)

 47歳の時、突如心臓麻痺に襲われて、あっという間の死だったそうですが、こ
れほど若かったとは知りませんでした。 出生もあいまいなところがあったり、
7歳の頃には母子の生活となり、小学校も転々とするなど、貧しく家庭的にも恵ま
れない子供時代であたようです。
 ウイキペディアに、『11歳の芙美子は本籍地の鹿児島に預けられたのち、旅商
いの両親に付いて山陽地方の木賃宿を転々した。』とあり、石炭産業で賑わう、
福岡県直方での日々は、「放浪記」の冒頭にも記されているのです。
 その後、尾道に移り、小学校を2年遅れで卒業したとあります。 15歳で高等女
学校に進み。このころにめきめきと文才が磨かれ、また教諭の支えもあり、18歳
にして「秋沼陽子」の筆名で地方新聞に詩や短歌を投稿していたそうです。

 女学校卒業後(19歳)、恋人を頼って上京し、下足番、女工、女給などで自活
していたが、翌年恋人は帰郷して一人になってしまうのです。関東大震災で尾道
などに移り住み、この頃から筆名に「芙美子」を用い、つけ始めた日記が「放浪
記」の原型になったとありました。

 1924年(21歳)、東京に戻り、文壇のいろんな人との出会いがある中、本人は
同棲しては別れることを繰り返すなど落ち着かない生活であったようですが、作家
活動は勢力的に進めて、雑誌社などに売り込み、徐々に浸透していったようです。
 23歳で画学生と結婚し、自伝的小説「放浪記」を女人芸術誌に20回(1928年)に
分けて連載するなどを経て、一躍流行作家になるのですね。

 放浪記の途中からほんの一部を抜粋してみました。
                (文末の朗読 youtubeその6より)

『 風鈴が、そっと私の心をなぶっていた。寂しい縁端に足を投げ出していた私
は、灯りの傍にいざり寄って男の胸に顔を寄せた。悲しいような動悸を聞いた。
悩ましい胸の哀れなひびきの中に、しばし私はうっとりしていた。切ない悲しさだ。
女の業なのだと思う。私の動脈はこんなひとにも噴水の様なしぶきをあげて来る。
吉田さんは震えて沈黙っていた。私は油絵具の中にひそむ、油の匂いをこの時程
悲しく思ったことはなかった。長い事、私達は情熱の克服に努めていた。やがて、
背の高い吉田さんの影が門から消えて行くと、私は蚊帳を胸に抱いたまま泣き出
していた。・・』

 活発な性格は、外国にも旅行したり活動的に行動し、新聞社の特派員、内閣情
報部のペン部隊役員にも選ばれたり、ジャーナリズムに便利に使われる形が続き
ますが、依頼されればすべて受けるという“大忙し”の日々だったのでしょう。
 「主婦の友」連載記事打ち合わせ会合(料亭)の翌日、心臓麻痺で急逝したの
です。

       亡くなる二日前
        (ウイキペディアより)

 葬儀委員長は、川端康成だったそうで、その弔辞の中で『故人は、文学的生命
を保つため、他に対して、時にはひどいこともしたのでありますが、しかし、後
二、三時間もすれば、故人は灰となってしまいます。死は一切の罪悪を消滅させ
ますから、どうか故人を許して貰いたいと思います』 と述べたとあります。
 具体的にどのような事柄に対してかは、これからでははかり知れませんが、割
と破天荒なところがあったのではないかと思われます。

 「放浪記」の中で、貧しい底辺の暮らしの中でも、ともすれば投げやりの気持
ちを奮い立たせ、自身を客観的に見つめながら強く生きてゆく精神力が滲み出て
いるように感じますし、そんな生活の中でも、冷静とも思えるほど、周囲のちょ
っとした事柄や、人の動きなど細かな鋭い観察力に裏打ちされた、表現が見事に
それらの雰囲気を創り出していると思いました。

 1930年『放浪記』が出版されベストセラーとなる。他に「風琴と魚の町」「清
貧の書」「牡蠣」『稲妻』『浮雲』等があり、常に女流作家の第一線で活躍しつ
づけた・・とありました。

     ベランダ花置きの ホタルブクロ(本文と関係ありません。)
         

 

朗読 林芙美子『放浪記』㈠

 

 

 

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