伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

編集ガール!

2013-11-04 21:30:09 | 小説
 ワンマン社長の下で成長してきた出版社の経理部に勤める高沢久美子27歳が、社長命令で社員全員が書かされた企画書に通販とウェブと雑誌を連携させファッション誌としても通用するクオリティの雑誌を創刊するというどこかの雑誌の記事をパクった企画を出しておいたところ社長がそれを気に入って、その雑誌の創刊と編集長就任を命じられ、編集経験ゼロのずぶの素人が各部からの寄せ集めの志気の低いメンバーで、雑誌創刊に挑むドタバタコメディ系ビジネス成長小説。
 高沢が隠密社内恋愛中の単行本編集部副編集長の編集者加藤学31歳が編集者としては唯一チームに入れられ、高沢は加藤に頼り切り、加藤は与えられた締切とメンバー、予算から現実的な企画、進行、スタッフを考案・手配して事実上雑誌の制作を進めていきますが、いざ撮影が始まると、20代後半から30代女性がターゲットのはずなのに加藤が集めてきたメンバーは男性誌目線で進めるために高沢が違和感を持ち、編集長権限で企画を一からやり直し始めます。そこから加藤はやる気をなくし、高沢はラフを全部直接チェックして徹夜仕事を続け、編集長としての自覚を持ち始め、現場を仕切っていくようになります。そのあたりの、高沢自身の職業人としての自覚・成長物語と、高沢と加藤のカップルの力関係逆転が、この作品のテーマとなっています。
 まったくの素人に5か月の準備期間で雑誌の創刊を命じるという非現実的な設定は超ワンマン社長の思い込みで受け入れるとしても、それがドタバタしながらも何とかなってしまうことや、高沢と加藤のカップルの行方など、そううまく行くかいと思ってしまいます。が、それは小説だからと気にしないことにしてみれば、高沢サイドからはある種の達成感が感じられ、加藤の・思いやり・思い切りにも爽快感を持ち得て、そこが読み味となる作品だと思います。


五十嵐貴久 祥伝社 2012年10月20日発行
月刊「小説NON」2012年7月号~2012年5月号連載
コメント
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