伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

余命1年のスタリオン

2013-11-27 01:50:44 | 小説
 2枚目半の種馬王子を看板にして実生活でも3人の女性と交際中の35歳バツイチの俳優小早川当馬が、肺の小細胞癌で余命1年と宣告され、その間に念願だった主演映画を撮影することになり、さらに子どもも生みたいと欲を出し…という余命宣告期限付き恋愛・人生論小説。
 ひとまわり年上47歳の清純派女優で実生活では激しいセックスを好む都留寿美子と当馬の癌宣告・抗癌剤治療後初めてのセックスの場面のやりとり(184~193ページ)が思いやりと2人の関係のよさを感じさせて、いいなぁと思う。私だったら、この展開だと寿美子に惹かれていくと思ってしまう。同い年のおじさん作家が描く男からの理想像にうまく踊らされているようにも思えますが。
 同時に、並みいる美人たちを差し置いて、美人とはいえない平凡な女性が当馬と結ばれ、当馬がそれに幸せを感じ続けるという展開は、いかにも女性読者層の受けを狙った感があります。新聞連載小説ということで、作者が読者層を考えて書いているということなんでしょうね。
 ストーリーとは関係ないですが、「女子ども向けの作品ばかりだと、良識ある男たちは日本の芸能を馬鹿にする。だが、金もつかわず観にきてもくれずに文句ばかりいう者など、誰が相手にするだろうか。大人の男がきちんと遊ばない国の文化が、いびつで幼いものになるのは、それなりの理由があるのだった」(32ページ)という指摘は、ちょっと耳が痛い。
 当馬は何か月も咳が続き風邪だろうと思っていたのが血痰が出て慌てて検査すると肺癌で余命1年と宣告されます。私も今年の前半何か月も咳が続いていて風邪がなかなか治らないなぁと思っていました(その頃電話をいただいた方には、ちょっと喉の調子が悪くて途中で咳き込むかもしれませんのでご了解くださいなどと言って電話を受けていました)ので、この本を読んでどっきりしたのですが、そこで改めて、そういえばいつの間にかあの咳治ってるなぁと気がついた次第。長期的な症状って、いつの間にか慣れてしまうし、なくなってもあまり気がつかないものですね。


石田衣良 文藝春秋 2013年5月15日発行
熊本日日新聞、秋田魁新報、高知新聞、北國新聞、中国新聞、神戸新聞、信濃毎日新聞連載
コメント
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