伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ぼくはこうして出張ホストになった

2013-11-20 20:31:35 | ノンフィクション
 親が多額の借金を抱え貧しかった学生時代の著者が、アルバイト先の店長の妻が関与するホスト派遣業にスカウトされ、ナンバー1ホストになり転落して廃業するまでを描いたノンフィクション。
 プロローグで語られる初めての顧客と会うときの心境に、いきなり冷水をかけられる思いをします。「初対面の女性が待つ部屋のインターフォンを押す瞬間だけは、今でも期待に胸が膨らむ。美人か、金持ちであればアタリ。両方だったら、大アタリ。それ以外は、たとえどんなに性格が良くてもハズレだ。」(2ページ)、「ブランドのロゴがデカデカとついたバッグ、ネックレスや腕時計も安物だろう。典型的な庶民のスタイル……完全にハズレだ。会社からは、客の希望はマッサージだと聞いていた。冗談じゃない、どうしてこんなに金にならない相手に僕がサービスしなければならないんだ。」(3~4ページ)、「いくら指名を入れてくれようが、彼女のようなハズレ客は存在価値がない。」(4ページ)。う~ん、ホストって、あるいはナンバー1ホストって、内心ではこういう目で客を見てるんだ。
 最初のころの試行錯誤の段階の話では、相手の女性の視点に立って考えてみる(81ページ)、掲示板に集う人々は皆もっと自分のことを理解してもらいたいと強く思っている(82ページ)、ホストを利用する人は寂しさや孤独を抱えている人が多い、心にも触れる接客を心がけるようにした(89ページ)、僕には相手の気持ちを100%理解することはできない、だが「理解しようとする努力をする」ことが大切なのだ(90ページ)、ホストを利用する人は「ホストなんて利用して、私は一体何をしているのだろう……」という自己嫌悪に陥っている、自己嫌悪を感じさせないためにはどうすればよいか、考え抜いた末お客様と別れる際には「次回も是非ご指名ください」ではなく「今日は楽しい時間をありがとうございました。明日からもまたお互い頑張りましょうね」と言うようにした(95~96ページ)など、謙虚というか、顧客のことを考える言葉が並んでいます。これ自体は、サービス業に関わる者として共感できるところですが、こういう姿勢でいた人がみるみるうちにプロローグのような感覚になっていくのは怖いことです。初心忘るるべからず、でしょうか。
 その自信を深めたナンバー1ホストの著者が、「経験を積む中で、女性はたった3つのポイントさえ抑えておけば満足させることができるということに気がついた。ポイントとは、『性器の位置と形状』『刺激する場所』『快感に慣れているかいないか』だ。」(164ページ)と断言していますが、さてそういうものなんでしょうか。


宮田和重 彩図社文庫 2012年2月20日発行
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