「空気がきれい」が売りの田舎町の小学校で、東京から転校してきた小学4年生の少女エミリが、同級生の紗英、真紀、晶子、由佳と校庭でバレーボールをしていたところをプールの更衣室の換気扇の点検に来た作業員と名乗る男に手伝いを頼まれてプールの更衣室に連れて行かれそのままレイプされ絞殺されたという事件が起こり、犯人が逮捕されずに3年が経過したときにエミリの母親麻子が中学1年になっていた4人を呼び出し、エミリが殺されたのはあんたたちのせいだ、あんたたちは人殺しよ、わたしはあんたたちを絶対に許さない、時効までに犯人を見つけなさい、それができないのなら私が納得できるような償いをしなさい、そのどちらもできなかった場合私はあんたたちに復讐するわと怒鳴りつけ、その言葉に縛られて生き続けた4人が結局人の命を奪うに至るという因果因縁話の短編連作。
成人した4人が順次自分の来歴を語る語りの中で、少しずつ事件に至る経緯や事件当日の状況、その後の麻子の行動と犯人像が明らかにされ、全体としてミステリー仕立てになっていますが、おそらくはそこよりは、心ないジコチュウの大人が鬱憤晴らしに怒鳴った1つの発言が相手の人生を縛り付け破壊するに至るという重苦しい宿命劇としての部分が読みどころの作品なのだと思います。
4人の少女たちのエピソードに続き最後に麻子のエピソードが登場します。ここで麻子には麻子の事情があり、4人のエピソードであまりにもジコチュウで性悪と描かれてきた麻子が実は善意だったというところまでひっくり返せれば、さらに欲張れば最後に「犯人」のエピソードを置いて実は犯人も悪人ではなかったという大どんでん返しがあれば、不条理劇としての深さが生じたのでしょうけれど、さすがに麻子の行為の設定が酷すぎて麻子への共感を呼ぶには至りません。
それにしても衝撃的な事件に遭遇した人がその後の人生を大きく規定され長い間事件を引きずり続ける宿命の重さの描写を読むにつけ、そういうことになりかねない事件に度々関与することになる自分の仕事の重さを改めて感じてしまいました。
湊かなえ 双葉文庫 2012年6月6日発行 (単行本は2009年6月)
成人した4人が順次自分の来歴を語る語りの中で、少しずつ事件に至る経緯や事件当日の状況、その後の麻子の行動と犯人像が明らかにされ、全体としてミステリー仕立てになっていますが、おそらくはそこよりは、心ないジコチュウの大人が鬱憤晴らしに怒鳴った1つの発言が相手の人生を縛り付け破壊するに至るという重苦しい宿命劇としての部分が読みどころの作品なのだと思います。
4人の少女たちのエピソードに続き最後に麻子のエピソードが登場します。ここで麻子には麻子の事情があり、4人のエピソードであまりにもジコチュウで性悪と描かれてきた麻子が実は善意だったというところまでひっくり返せれば、さらに欲張れば最後に「犯人」のエピソードを置いて実は犯人も悪人ではなかったという大どんでん返しがあれば、不条理劇としての深さが生じたのでしょうけれど、さすがに麻子の行為の設定が酷すぎて麻子への共感を呼ぶには至りません。
それにしても衝撃的な事件に遭遇した人がその後の人生を大きく規定され長い間事件を引きずり続ける宿命の重さの描写を読むにつけ、そういうことになりかねない事件に度々関与することになる自分の仕事の重さを改めて感じてしまいました。
湊かなえ 双葉文庫 2012年6月6日発行 (単行本は2009年6月)