数学を日常生活やそれを支える技術との関連で説明し、数学への興味を誘う本。
著者の「授業実践開発研究室」で研究し、千葉大学附属中学3年生の授業に用いたプログラムから、8つのテーマを紹介しています。
今どきの本では、一番のエピソードを最初に持ってくるということもあると思いますが、私には最初の音律とハーモニーの話が、私が音楽分野は少し苦手なこともあり、勉強になりました。和音では振動数が整数倍だときれいに響くということは感覚的に理解できますが、音律でそれを優先して、1オクターブは2倍、5度の関係(ドとソ、ラとミなど)では3/2倍という2つのことだけで決めた音律をピタゴラス音律というのだそうです。最初の音(例えばド)から5度ずつ上げて1オクターブを超えたら1オクターブ戻し、また5度上げていくという順序で各音の振動数を決めていくことになりますが、この作業を1巡すると、最初の音の1オクターブ上の音は結局2.02729倍になってしまうとか(4~10ページ)。このように音の振動数を整数比で決める音律を「純正律」と言い、ピタゴラス音律も純正律の1つですが、一般に用いる純正律では、ドの振動数を1とするとレは9/8倍、ミは5/4倍、ファは4/3倍、ソは3/2倍、ラは5/3倍、シは15/8倍とされ、これは長3度(半音4つ)が5/4倍、短3度(半音3つ)が6/5倍で3度のハーモニーがきれいになるそうです。それでドミソ、ソシレなどの長調の和音がきれいというわけ。ところが、純正律では全音1つ(半音2つ)違うと基本的に9/8倍、短音1つ違うと16/15倍になるけれど、ソとラの間だけ10/9倍となるため、曲の途中で転調が困難という問題があり、これを避けるために1オクターブを2倍として半音12を均等(半音違うと2の12乗根倍)に配分した「平均律」が鍵盤楽器で広く使われるようになったけれども今度は和音がやや濁ってしまうのだそうです(10~17ページ)。音律にいくつも種類があることも知らなかった私にはビックリの世界でした。
その他の点では、素因数分解と暗号鍵の話、複素平面の話が、これまで読んでも難しいなぁという印象しか残らなかった分野で、少しイメージしやすく書かれているなと感じました。
藤川大祐 丸善出版 2013年7月30日発行
著者の「授業実践開発研究室」で研究し、千葉大学附属中学3年生の授業に用いたプログラムから、8つのテーマを紹介しています。
今どきの本では、一番のエピソードを最初に持ってくるということもあると思いますが、私には最初の音律とハーモニーの話が、私が音楽分野は少し苦手なこともあり、勉強になりました。和音では振動数が整数倍だときれいに響くということは感覚的に理解できますが、音律でそれを優先して、1オクターブは2倍、5度の関係(ドとソ、ラとミなど)では3/2倍という2つのことだけで決めた音律をピタゴラス音律というのだそうです。最初の音(例えばド)から5度ずつ上げて1オクターブを超えたら1オクターブ戻し、また5度上げていくという順序で各音の振動数を決めていくことになりますが、この作業を1巡すると、最初の音の1オクターブ上の音は結局2.02729倍になってしまうとか(4~10ページ)。このように音の振動数を整数比で決める音律を「純正律」と言い、ピタゴラス音律も純正律の1つですが、一般に用いる純正律では、ドの振動数を1とするとレは9/8倍、ミは5/4倍、ファは4/3倍、ソは3/2倍、ラは5/3倍、シは15/8倍とされ、これは長3度(半音4つ)が5/4倍、短3度(半音3つ)が6/5倍で3度のハーモニーがきれいになるそうです。それでドミソ、ソシレなどの長調の和音がきれいというわけ。ところが、純正律では全音1つ(半音2つ)違うと基本的に9/8倍、短音1つ違うと16/15倍になるけれど、ソとラの間だけ10/9倍となるため、曲の途中で転調が困難という問題があり、これを避けるために1オクターブを2倍として半音12を均等(半音違うと2の12乗根倍)に配分した「平均律」が鍵盤楽器で広く使われるようになったけれども今度は和音がやや濁ってしまうのだそうです(10~17ページ)。音律にいくつも種類があることも知らなかった私にはビックリの世界でした。
その他の点では、素因数分解と暗号鍵の話、複素平面の話が、これまで読んでも難しいなぁという印象しか残らなかった分野で、少しイメージしやすく書かれているなと感じました。
藤川大祐 丸善出版 2013年7月30日発行