さまざまなフルーツについて、栄養価や植物としての特性、品種改良の経過などを解説した本。
栗は収穫した直後に約4℃で1か月程度貯蔵すると甘みが増すが、その理由は栗が実を凍らせないために糖分を出すのだそうです(砂糖水が凍りにくいのと同じ原理)(158~159ページ)。だから収穫後も生きていると説明されているのですが、不思議な話です。エチレンがリンゴやバナナを熟させ、リンゴは熟するとエチレンを放出するので熟成が伝染するように広がるとか、種なしの果実を作るには花粉が種を作る能力をなくすとともに種ができなくても実が大きくなるという性質(実は動物に食べさせて種をまき散らすために作られるのでふつうは種ができないと実も大きくならない)の双方が必要など、興味深い知識が少しずつ説明されています。
私には、どちらかというと、品種の名前の付け方のエピソードが気になりました。近年はリンゴのトップ品種となった「ふじ」は育成者が山本富士子の大ファンだったため(39ページ)とか、アンデスメロンはアンデス山脈とはまったく関係ない日本産で「安心して栽培できます」「安心して食べられます」の「安心です」を売り文句にして「アンデス」になった(85ページ)とか。
各果物ごとに写真が掲載されていますが、その大半が新宿高野(タカノフルーツパーラー)の提供で、あとは農協(JA)などの提供になっています。フルーツの写真くらい独自に撮影すればいいと思うのですが、新書はその程度の予算もないのでしょうか。パッションフルーツの名前の由来の説明で、パッションは情熱ではなくキリストの受難の意味で花の「おしべとめしべが十字架模様をつくっている」ためと書かれています(212~213ページ)が、こういう説明をしながらパッションフルーツの果実の写真が新宿高野提供で掲載されているだけで花の写真がないのは読み手にとっては残念です。それにパッションフルーツの花はめしべ3本おしべ5本なので十字架模様といえるか…
田中修 講談社現代新書 2013年8月12日発行
栗は収穫した直後に約4℃で1か月程度貯蔵すると甘みが増すが、その理由は栗が実を凍らせないために糖分を出すのだそうです(砂糖水が凍りにくいのと同じ原理)(158~159ページ)。だから収穫後も生きていると説明されているのですが、不思議な話です。エチレンがリンゴやバナナを熟させ、リンゴは熟するとエチレンを放出するので熟成が伝染するように広がるとか、種なしの果実を作るには花粉が種を作る能力をなくすとともに種ができなくても実が大きくなるという性質(実は動物に食べさせて種をまき散らすために作られるのでふつうは種ができないと実も大きくならない)の双方が必要など、興味深い知識が少しずつ説明されています。
私には、どちらかというと、品種の名前の付け方のエピソードが気になりました。近年はリンゴのトップ品種となった「ふじ」は育成者が山本富士子の大ファンだったため(39ページ)とか、アンデスメロンはアンデス山脈とはまったく関係ない日本産で「安心して栽培できます」「安心して食べられます」の「安心です」を売り文句にして「アンデス」になった(85ページ)とか。
各果物ごとに写真が掲載されていますが、その大半が新宿高野(タカノフルーツパーラー)の提供で、あとは農協(JA)などの提供になっています。フルーツの写真くらい独自に撮影すればいいと思うのですが、新書はその程度の予算もないのでしょうか。パッションフルーツの名前の由来の説明で、パッションは情熱ではなくキリストの受難の意味で花の「おしべとめしべが十字架模様をつくっている」ためと書かれています(212~213ページ)が、こういう説明をしながらパッションフルーツの果実の写真が新宿高野提供で掲載されているだけで花の写真がないのは読み手にとっては残念です。それにパッションフルーツの花はめしべ3本おしべ5本なので十字架模様といえるか…
田中修 講談社現代新書 2013年8月12日発行