伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議

2013-11-09 23:59:06 | 自然科学・工学系
 宇宙全体の視点から生命の成り立ちや起源を解明する「宇宙生物学」の立場から、人間の体について解説した本。
 人間は神経や筋肉を動かす信号としてナトリウムイオンを使用していますが、これは生物が生まれた当時海水中に大量にナトリウムイオンが含まれていたためにこれを利用して進化したもので、海水にナトリウムイオンが大量に含まれるようになったのは当時は現在の12分の1の距離にあった月が現在の4倍の速さで地球を公転し地球の自転も今の4倍の速さであったため圧倒的な潮汐力で1時間半に1回潮の干満が繰り返されて海は大嵐状態が続いたために岩石中のナトリウムが溶け出したもので、その後月が次第に離れてナトリウムが大量に溶け出した海が静かになって、現在の生物が誕生したという経過で、現在のようなナトリウムを利用する多細胞生物が誕生したのは月がかつては近く現在は遠くなっているおかげだとか(14~35ページ)。逆に、地球上の全ての生物は、エネルギーの利用(アデノシン3リン酸=ATP⇔アデノシン2リン酸=ADP)、遺伝情報の伝達(DNA、RNA)にリンを使っていますが、リンは海水中にほとんど含まれていなくて生物はかなり無理をしてリンを利用してきた、言い換えればリンを利用することが生物が生きていく上でどうしても必要だったそうです(100~127ページ)。地球は鉄の塊ともいえる星なのでほとんどの最近にとっても鉄は生きていくために不可欠な元素となっているため、人体は必要最小限の鉄しか持たないことによって感染症予防に役立てているので貧血になりやすい(170~197ページ)そうです。
 いろいろな点で、人間や生物一般について、これまで考えたことがなかった視点から検討し理解することができ、知的好奇心を刺激される本でした。


吉田たかよし 講談社現代新書 2013年9月20日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする