労働法の教科書。
自分の専門分野について、全般的なおさらいと最近の動向等について見落としていることがないかという、自分の知識のアップデート・ブラッシュアップ目的で、この手の本を見つけて時間があるときに読むのですが、法改正、制度改正関係は、特に裁判ではあまり使わない行政規制的な法令制度の改正や新設関係は、勉強になり、他方で新しい判例のフォローはあまりなされてない印象を持ちました。そのあたりは、学者の関心と弁護士の関心の違いなんでしょうね。新しい裁判例は、労働契約法第20条(現在はパート・有期法第8条)と残業代関係に注目してそこはフォローしたという感じで、その他分野はあまり見てないかなと思いました。労災保険から療養給付・休業給付受給中の労働者について打切補償をして解雇できるかという問題について、解雇制限(労働基準法第19条)の説明では、できないとした専修大学事件の東京高裁判決を紹介している(257ページ)のですが、この東京高裁判決が最高裁で覆されたことに気がつかなかったようです(判例索引でも専修大学事件の最高裁判決は漏れています:514ページ)。執筆担当者が違う労災保険の説明では最高裁判決の方を紹介している(368ページ)のですからクロスチェックが足りなかったということなんでしょうけど。
労働事件を日常的に取り扱う弁護士の意識からは、解雇の記述が、えっこれだけ?と思ってしまいますし、休職とか労災とかもずいぶんとあっさりしたものだなと思います。それは、労働法という法体系の中で、弁護士のと言うか、私自身の興味・感心が本当にごく一部に偏っているのだなという自己認識・発見でもあるわけですが。
浅倉むつ子、島田陽一、盛誠吾 有斐閣 2020年4月10日発行(初版は2002年4月)
自分の専門分野について、全般的なおさらいと最近の動向等について見落としていることがないかという、自分の知識のアップデート・ブラッシュアップ目的で、この手の本を見つけて時間があるときに読むのですが、法改正、制度改正関係は、特に裁判ではあまり使わない行政規制的な法令制度の改正や新設関係は、勉強になり、他方で新しい判例のフォローはあまりなされてない印象を持ちました。そのあたりは、学者の関心と弁護士の関心の違いなんでしょうね。新しい裁判例は、労働契約法第20条(現在はパート・有期法第8条)と残業代関係に注目してそこはフォローしたという感じで、その他分野はあまり見てないかなと思いました。労災保険から療養給付・休業給付受給中の労働者について打切補償をして解雇できるかという問題について、解雇制限(労働基準法第19条)の説明では、できないとした専修大学事件の東京高裁判決を紹介している(257ページ)のですが、この東京高裁判決が最高裁で覆されたことに気がつかなかったようです(判例索引でも専修大学事件の最高裁判決は漏れています:514ページ)。執筆担当者が違う労災保険の説明では最高裁判決の方を紹介している(368ページ)のですからクロスチェックが足りなかったということなんでしょうけど。
労働事件を日常的に取り扱う弁護士の意識からは、解雇の記述が、えっこれだけ?と思ってしまいますし、休職とか労災とかもずいぶんとあっさりしたものだなと思います。それは、労働法という法体系の中で、弁護士のと言うか、私自身の興味・感心が本当にごく一部に偏っているのだなという自己認識・発見でもあるわけですが。
浅倉むつ子、島田陽一、盛誠吾 有斐閣 2020年4月10日発行(初版は2002年4月)