伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

僕はロボットごしの君に恋をする

2020-07-02 19:34:17 | 小説
 AIロボット研究所に勤務して人間と見分けが付かない精巧な人型ロボットを遠隔操作してパトロールし警備する業務に就いている大沢健が、研究所のエリート研究員天野陽一郎の妹の咲に恋愛感情を抱き、業務を装って人型ロボットを佐藤と名乗らせて咲に近づき、ロボット越しに会話をして疑似デートを楽しむが、次第に咲がロボットと知らずに「佐藤」に恋心を抱き、大沢は佐藤に嫉妬し始めて悩み…というSF的青春小説。
 前半、容姿にも体力にも恵まれない大沢健が、ルックスも良く作られ怪力で不死身のロボットを操作して、規則に反して様々なことにロボットを使って得意になるようすは、デジャブ感があります。何だろうと考えてみると、ドラえもんにおねだりして魔法のようなおもちゃを出してもらい得意になって振り回すのび太ですね、これ。それが、のび太の場合のような微笑ましさを感じさせないのは、大沢健が28歳の社会人だから。子どもがやるのなら許せるけれども、大人になってこれでは許されないし、見ていてむしろ不愉快に思えます。ロボットや未来の機械でなくても、何らかの権限を手にすると自分勝手に振り回したくなるプチ権力者(もちろん大人)が世の中には少なくありませんが、そういう存在の醜さをも象徴しているのなら、あっぱれと思いますが。
 後半は、ロボットが恋愛感情を抱けるか、ロボットに恋愛感情を抱かせることが、技術的倫理的にできるかというある種哲学的な問題がテーマになります。
 第2章(「プログラム2」)から第6章(「プログラム6」)の冒頭にメインストーリーとは別立てのほのめかし的な短い文章が入っていますが、これは、ない方がいいんじゃないかなぁって思いました。もうひとつひねりを用意しているからそこは見せておいていいという判断なのでしょうけど、それなしで第6章で一気に展開した方がダイナミックだと思います。


山田悠介 河出文庫 2020年4月30日発行(単行本は2017年10月)
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