髄膜炎で急死した妻朋子の1周忌を終え、2歳半の娘美紀を抱えて、トップセールスマンの過去を振り切って総務部に異動してもらい復職した武田健一が、美紀を引き取ろうかという義父母の申し出を断り、周囲の人々に助けられながら美紀と2人で暮らす様子を描いた短編連作小説。
幼い娘を育てる奮闘記的な部分は必ずしも多くなくて(この種の作品ではほぼ必ずある子どもが病気になるシーンがないのが象徴的です)、子どもとの心理的な交流、すれ違いの方に重点が置かれ、また再婚を巡る本人の心の揺れや義父母の心情、義父母との関係にも紙幅が割かれ、妻の死を起点とした人間関係・親族関係を描く小説という色彩も強くあります。
私自身、娘を持つ父親として、子どもの頃の娘に投影してしまうのですが、健一が再婚を考える相手奈々恵を引き合わせた時に美紀がハイテンションで奈々恵と接していたのにうちに帰ると食べたものを吐いてしまうことを繰り返し、もう奈々恵とは会わない、2人で会ってくれと言い出した後、健一が日曜日の朝奈々恵を自宅に呼んで美紀と朝食をとらせる場面があり、その後は度々自宅を訪れる奈々恵に美紀もこだわりなく接し馴染んでいるような描写になります。健一の視点で書かれている関係上、美紀がどう奈々恵を受け容れどう折り合っていったのかは描かれていないように思え、私には読み取れませんでした。人間関係は理屈ではないし、折り合いを付けていくものでしょうけれども、これでいいのかとちょっと納得できないものを感じました。
重松清 中央公論新社 2009年3月25日発行
幼い娘を育てる奮闘記的な部分は必ずしも多くなくて(この種の作品ではほぼ必ずある子どもが病気になるシーンがないのが象徴的です)、子どもとの心理的な交流、すれ違いの方に重点が置かれ、また再婚を巡る本人の心の揺れや義父母の心情、義父母との関係にも紙幅が割かれ、妻の死を起点とした人間関係・親族関係を描く小説という色彩も強くあります。
私自身、娘を持つ父親として、子どもの頃の娘に投影してしまうのですが、健一が再婚を考える相手奈々恵を引き合わせた時に美紀がハイテンションで奈々恵と接していたのにうちに帰ると食べたものを吐いてしまうことを繰り返し、もう奈々恵とは会わない、2人で会ってくれと言い出した後、健一が日曜日の朝奈々恵を自宅に呼んで美紀と朝食をとらせる場面があり、その後は度々自宅を訪れる奈々恵に美紀もこだわりなく接し馴染んでいるような描写になります。健一の視点で書かれている関係上、美紀がどう奈々恵を受け容れどう折り合っていったのかは描かれていないように思え、私には読み取れませんでした。人間関係は理屈ではないし、折り合いを付けていくものでしょうけれども、これでいいのかとちょっと納得できないものを感じました。
重松清 中央公論新社 2009年3月25日発行