伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

人はなぜ税を払うのか 超借金政府の命運

2020-07-23 14:22:32 | 人文・社会科学系
 税金の目的・趣旨を、ただ強い者が弱い者から収奪していた古代・中世から権利保障の対価という考えに変化した近代(フランス人権宣言、代表なくして課税なし)に至る歴史を解説し、現代では、課税は税金を払えない貧困層も含めた人々に対する公的サービスを実施する財源を確保するとともに所得の再分配を行うためのものであり、納税者は自分に対する見返りを求める「会費」的な思考ではなく「無償の愛」により納税すべきとした上で、ふるさと納税と日本版消費税を例に挙げて日本の税制の欠陥を指摘する本。
 タイトルを見ると、納税者の社会心理的な問題がテーマのように見えますが、この本の内容からすれば、「人はなぜ税を払うべきなのか」とか「税制はどうあるべきか」などの方が適切に思えます。その観点からは、古代からの税制の解説に相当な紙幅を割いていることが、著者が主張している現在の税制のあり方が正しいという論証にうまくつながっているのか、やや疑問に思えます。
 そして、この本の後半がほとんど日本版消費税批判に充てられていることを見ると、税制のあり方自体よりも、日本版消費税がいかにおかしいか、税の本来あるべき姿からいかにかけ離れているかが著者のいいたかったことなのかなと思います。著者の主張自体は、納得できますが、より正面から日本版消費税を論じ、税制のあり方も歴史の説明を延々とやらずに近現代政治・民主主義等から説いてまっすぐに斬り込んだ方がわかりやすく読みやすくなると思います。


浜矩子 東洋経済新報社 2020年5月28日発行
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