伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

女たちが死んだ街で

2022-05-02 23:59:41 | 小説
 ロサンジェルスで起こった15年前の街娼ら女性の喉を切り裂く連続殺人事件と、再度起こった同様の手口の殺人事件を題材に、15年前に喉を切られたが生き残ったフィーリア、娘を殺害されたドリアンの訴え・恨み言を通じて、通りや怪しげな店で売春をする女性達に対する人々の蔑み、警察の無気力・無関心を描いた小説。
 裏表紙の紹介では「女性たちの目線から社会の暗部を描き出す、エドガー賞最終候補の傑作サスペンスミステリ!」とされていますし、冒頭には「歯に衣着せぬフェミニストで、女性の性と生殖に関する健康の分野における先駆者で通りで働く女性たちの理解者でもあったフェリシア・スチュアートの思い出に。」という献辞もあるのですが、女の敵は女的な描き方もあり、フェミニズム作品と思って読むとちょっと違うかなと感じます。ミステリー作品としては、布石も謎解きも十分とは言えず、サスペンスとしては刑事が犯人に迫っていく過程が丁寧に描かれていなくて物足りなく思えます。
 訳者あとがきでは、他の作家の「読みだしたら止まらない物語」という言葉(厳密には「この作品がそうだ」とは言っていませんが:378ページ)を掲載し、自身も「本書は(略)ページターナーです。」と述べつつ(378ページ)、「じつは、著者の筆が進まなかったり、著者自身があまり好きではなかったりする部分は、(作業時にその事実を知らなくても)翻訳のスピードも上がらないことがままあるのですが、今回もそれで、翻訳に時間がかかったのも第一部と第三部でした」(388ページ)と書いています。率直なところ、第三部(183ページ~)に入るまでは、だらだらとした展開で、読み続けるのがずいぶんと苦痛に思え、もう投げだそうと何度も思い、どこがページターナー(読み始めたら止められない本の意味)だと、思っていました。


原題 : THESE WOMEN
アイヴィ・ポコーダ 訳:高山真由美
ハヤカワ・ポケット・ミステリ 2021年10月15日発行(原書は2020年)
コメント
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