伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

たとえ世界を敵に回しても

2022-05-29 19:13:25 | 小説
 北陸の地方都市の介護施設で働く49歳一人暮らしの小山葉子が、施設や自宅に迷惑系ユーチューバー「ピエロマン」は葉子の息子だとする告発・苦情を受け、5年前に東京へ行くと置き手紙をして出て行った息子雅也が人様に迷惑をかけているのかと思い煩って、ピエロマンの住所と知らされた新宿歌舞伎町のマンションを訪れるが、そこにいたピエロマンの手伝いをしているという若者から3日前からピエロマンが行方不明だと知らされて奔走するというミステリー色のあるヒューマンドラマ。
 冒頭、介護職員歴17年になる葉子が新たな施設に勤務して2か月になるが、効率優先で食餌介護を1人5分であげろと指示されて戸惑い、誤嚥事故に遭遇して危うく死亡事故に至りかねないところを何とか切り抜けるシーンがあり、介護労働の現場の困難さを描く小説と受け止めて読み始めたのですが、その後関連するエピソードや展開はなく、えっ、この第1章は何だったの?と思います。
 「ホストに嵌まる客は、間違いなく承認欲求に飢えているタイプだ」、騙されていることに「薄々気付いているんだろうけど、その現実を直視したくないんだよ。そこが承認欲求の罠なんだ。人に愛された経験がないから、いくら金があっても自分に自信が持てないんだろうな。それが見え透いた嘘だとわかっていても、その言葉にすがってしまうんだ」(104ページ)というのは、そうだろうなと思い、しかしホストがそういうのを聞くとすごく嫌な気分になります。


志駕晃 角川書店 2022年4月4日発行
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