アメリカ合衆国の建国(独立戦争)前後からトランプ政権に至るまでの外交・対外政策について解説した本。
250年ほどの期間を通して読むと、アメリカの/政権の姿勢が、これまでに持っていた印象以上に、理屈/理念は語っているものの一貫性はなくその時期その時期の国際情勢、経済事情等によって揺れ動いてきたことが感じられました。
また、著者が「はじめに」で「自らを自由や民主主義の代弁者とするアメリカの思い込みと、対象地域の認識のギャップがアメリカ外交史に見られる大きな特徴だったとすれば、『受け手』の側からの視点を投入することはアメリカ外交の歴史的評価に不可欠であろう」とし、「あとがき」で「私にとってのアメリカとの遭遇は、ベトナム戦争というプリズムを通じてであった」「それから半世紀以上経った今でも、このときの経験から逃れようもなく、また逃れたいとも思わない」と自己のスタンスを示しているように、アメリカの政権と外交姿勢に対して、距離を置いた少し冷ややかな評価が基本線となっています。ニクソン=キッシンジャー外交について「目的のためには手段を選ばず」(254ページ)という表現とか、ソ連のアフガニスタン侵攻についてイスラム原理主義がソ連邦内の中央アジアに拡大することをソ連が恐れていることを知りながらブレジンスキー(カーター政権の国家安全保障問題担当補佐官)が反政府イスラム勢力を支援してソ連を挑発したとする分析(270~271ページ)など、アメリカに親近感を持たない私には、そうかそうかと読めますが、アメリカ大好きの人は不快に思うでしょう。
半分くらいはどこかで聞き知っていることがテーマでそれを掘り下げているという内容の性質と、注が1つもないということで、東京大学出版会発行の研究者による論文ないしは教科書的な書物であるにもかかわらず、とても読みやすいです。
西崎文子 東京大学出版会 2022年3月28日発行
250年ほどの期間を通して読むと、アメリカの/政権の姿勢が、これまでに持っていた印象以上に、理屈/理念は語っているものの一貫性はなくその時期その時期の国際情勢、経済事情等によって揺れ動いてきたことが感じられました。
また、著者が「はじめに」で「自らを自由や民主主義の代弁者とするアメリカの思い込みと、対象地域の認識のギャップがアメリカ外交史に見られる大きな特徴だったとすれば、『受け手』の側からの視点を投入することはアメリカ外交の歴史的評価に不可欠であろう」とし、「あとがき」で「私にとってのアメリカとの遭遇は、ベトナム戦争というプリズムを通じてであった」「それから半世紀以上経った今でも、このときの経験から逃れようもなく、また逃れたいとも思わない」と自己のスタンスを示しているように、アメリカの政権と外交姿勢に対して、距離を置いた少し冷ややかな評価が基本線となっています。ニクソン=キッシンジャー外交について「目的のためには手段を選ばず」(254ページ)という表現とか、ソ連のアフガニスタン侵攻についてイスラム原理主義がソ連邦内の中央アジアに拡大することをソ連が恐れていることを知りながらブレジンスキー(カーター政権の国家安全保障問題担当補佐官)が反政府イスラム勢力を支援してソ連を挑発したとする分析(270~271ページ)など、アメリカに親近感を持たない私には、そうかそうかと読めますが、アメリカ大好きの人は不快に思うでしょう。
半分くらいはどこかで聞き知っていることがテーマでそれを掘り下げているという内容の性質と、注が1つもないということで、東京大学出版会発行の研究者による論文ないしは教科書的な書物であるにもかかわらず、とても読みやすいです。
西崎文子 東京大学出版会 2022年3月28日発行