伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

運命の絵 もう逃げられない

2022-05-03 23:56:19 | エッセイ
 著者が選んだ名画のテーマ、成り立ち、画家の生涯などの背景事情を織り込んだ絵画評論集。
 私が見つめても気がつかない(文庫サイズでは豆粒どころかごま粒大のものやページの継ぎ目に埋もれたりして見えなかったりもしますが)細部の解説に、専門家のこだわりというか執念を感じます。知らなかった絵を見られたり、よく知らなかった画家の人生を垣間見たりできたのも収穫でした。印象としては、紹介されている画家は優雅な人生を送った者が多かったようです。私はどうも生前世間の理解を得られずに不遇を託った画家の方に興味を持ってしまうのですが。
 直接取り上げた絵だけじゃなくて関連して紹介されている絵も興味深いのですが、「メデューズ号の筏」(テオドール・ジェリコー)491×716cm(36~37ページ)、「ヤッファのペスト患者を見舞うナポレオン」(アントワーヌ=ジャン・グロ)523×715cm(142~143ページ)って、壁画・天井画ならともかく、ルーヴルにはそんなでかい絵があるのかと驚きました。
 さまざまな運命があるとは言え、どこがどう「運命の絵」なんだろうと疑問に思えます。絵の選択基準は、著者の好みなり思い入れなんだろうと思えるのですが。


中野京子 文春文庫 2022年2月10日発行(単行本は2019年1月)
「オール讀物」連載
コメント
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