発光生物について、バクテリアから魚類までの分類(門・綱・目・科・属等)ごとに発光種の有無、代表的な発光種の分布・生活域、発光の態様(発光する部位、発光の色、発光液の放出の有無等)、発光のメカニズム(発光バクテリアによる「共生発光」か、酵素基質反応(ルシフェリンールシフェラーゼ反応)か発光タンパク質(フォトプロテイン)によるものか、発光物質は餌から得ているのか等)、発光の役割(海生の場合に腹側を発光させることで見上げた海面の明るさと同期して捕食者に発見されにくくするカウンターイルミネーション、捕食者を幻惑したり煙幕として逃げる、発光によってより上位の捕食者に捕食者の存在を気づかせる防犯警報機能、食べてもまずいという警告、求愛等の種内コミュニケーション、餌の誘因、自らの視界の確保等)について解説した本。
基本的に研究者向けに、これまでの世界中・歴代の研究発表・報告を集大成する形でとりまとめたもの。深海魚など、実物(生存中の)を見た者がいない/ほとんどいない報告例で、その後発光の報告がないものも多々あり、その場合に本当に発光したのかが疑わしいと書くか、報告者が信頼できる人物だから間違いないだろうかと書くか、まさに業界内の人でないと書けない類いの本です。
網羅的に発光生物と発光に関する各項目が整理されて記述されていて(それも、著者によれば、「書かれていることはどれも、日本語の書籍には一度も登場していない事柄ばかりであることだけは請けあおう」とのことです:20ページ)、学術書として素晴らしいものだと思いますが、専門外の読者には、分類についてのゲノム解析等による近時の再考の反映等の記述の専門的難解さ、発光のメカニズムがわかったものについての化学物質の同定や反応の説明の化学的記述の難解さ、他方で発光の役割については生きたまま捕獲できた場合に周囲の明るさを変化させてそれに応じて腹側の発光強度の変化を観察できた場合のカウンターイルミネーション機能以外は概ね推測にとどまることなどから、読み通すには相当な忍耐力を要します。
四足動物にはこれまで発光種は見つかっていないが、海生生物ではむしろ発光しない生物の方が少ないのだそうです。バミューダ沖中深層(水深500~700m)の魚類を網で集めて調べた結果その81%の属、66%の種、96.5%の個体が発光種だったという報告もあるとのことです(313ページ)。カリフォルニア沖の表層から超深海までを無人探査船でつぶさに調査した27年分の記録をまとめた論文によると表層から超深海まですべてを平均しても確認された生物個体の76%が発光種であったそうです(同ページ)。生物に対する見方を改めて考えさせられました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en2.gif)
大場裕一 名古屋大学出版会 2022年2月28日発行
基本的に研究者向けに、これまでの世界中・歴代の研究発表・報告を集大成する形でとりまとめたもの。深海魚など、実物(生存中の)を見た者がいない/ほとんどいない報告例で、その後発光の報告がないものも多々あり、その場合に本当に発光したのかが疑わしいと書くか、報告者が信頼できる人物だから間違いないだろうかと書くか、まさに業界内の人でないと書けない類いの本です。
網羅的に発光生物と発光に関する各項目が整理されて記述されていて(それも、著者によれば、「書かれていることはどれも、日本語の書籍には一度も登場していない事柄ばかりであることだけは請けあおう」とのことです:20ページ)、学術書として素晴らしいものだと思いますが、専門外の読者には、分類についてのゲノム解析等による近時の再考の反映等の記述の専門的難解さ、発光のメカニズムがわかったものについての化学物質の同定や反応の説明の化学的記述の難解さ、他方で発光の役割については生きたまま捕獲できた場合に周囲の明るさを変化させてそれに応じて腹側の発光強度の変化を観察できた場合のカウンターイルミネーション機能以外は概ね推測にとどまることなどから、読み通すには相当な忍耐力を要します。
四足動物にはこれまで発光種は見つかっていないが、海生生物ではむしろ発光しない生物の方が少ないのだそうです。バミューダ沖中深層(水深500~700m)の魚類を網で集めて調べた結果その81%の属、66%の種、96.5%の個体が発光種だったという報告もあるとのことです(313ページ)。カリフォルニア沖の表層から超深海までを無人探査船でつぶさに調査した27年分の記録をまとめた論文によると表層から超深海まですべてを平均しても確認された生物個体の76%が発光種であったそうです(同ページ)。生物に対する見方を改めて考えさせられました。
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大場裕一 名古屋大学出版会 2022年2月28日発行