多摩川河川敷で賞金狙いで殺人犯が遺棄した拳銃を探す父ちゃん(オノダ)とその娘の未就学児ちえ(ちーちゃん)、雀荘を経営している元麻雀プロの鈴子さん、掘っ立て小屋に住む糖尿病で左足を失ったクボヤマさん、蒲田の居酒屋で失恋して飲んだくれていて父ちゃんと知り合った大学生のレンアイことワタナベら、多摩川河川敷で顔を合わせる面々の過ごす夏の日々を描写した小説。
これらの人びとの憂鬱、停滞、倦怠感を基調としつつ、ひとり突き抜けた感のある鈴子さんの姪の大学生ユッコさんが明るさとふつうの展開・進行の要素を持ち込んでいて、それがスパイスなのか、全体として何を書きたいのかを不明瞭にしているのか、今ひとつ見えにくく思えました。
また全編を未就学児のちえの視点で書いているのですが、ちえが知り得ない描写も見られ、そこが意識的な「破」なのか、一貫性の追求の甘さなのか、定かでありません。そもそも未就学児の視点で、セックスとかも含め大人の会話や事情が、自分にはよくわからないなどの前置きや評価を付けずにごく当然のように述べられていること自体、設定に無理があるように感じられるのですが(「じゃりン子チエ」みたいにませてひねた子どもという設定でもないわけですし)。
煙草の煙と麻雀の話題の多い作品を書いているこの作者が1994年生まれというのも、ちょっと驚きました。
平沢逸 講談社 2022年7月7日発行
群像新人文学賞受賞作
これらの人びとの憂鬱、停滞、倦怠感を基調としつつ、ひとり突き抜けた感のある鈴子さんの姪の大学生ユッコさんが明るさとふつうの展開・進行の要素を持ち込んでいて、それがスパイスなのか、全体として何を書きたいのかを不明瞭にしているのか、今ひとつ見えにくく思えました。
また全編を未就学児のちえの視点で書いているのですが、ちえが知り得ない描写も見られ、そこが意識的な「破」なのか、一貫性の追求の甘さなのか、定かでありません。そもそも未就学児の視点で、セックスとかも含め大人の会話や事情が、自分にはよくわからないなどの前置きや評価を付けずにごく当然のように述べられていること自体、設定に無理があるように感じられるのですが(「じゃりン子チエ」みたいにませてひねた子どもという設定でもないわけですし)。
煙草の煙と麻雀の話題の多い作品を書いているこの作者が1994年生まれというのも、ちょっと驚きました。
平沢逸 講談社 2022年7月7日発行
群像新人文学賞受賞作