
★彷徨い続ける船 司 修
「親しい画家が、まさに天才的画風を表わしていた時期に、‥箱庭療法、絵画療法をする病院へ入院しました。自分を見失った患者の描いた絵が病院の廊下に張り出されていました。それは児童画に近い素朴な個性を表して芸術的作為のない幻想的な絵ばかりでした。その中に友人の絵もありました。どうしたことか、彼の絵は平凡なものでした。画家である友人の絵が治療として描かれた時平凡であることと、狂気に動かされて天才的な画風を保っていることは、わたしに不思議な思いを残しました。」
★「トランプ」と『リチャード三世』 吉見俊哉
「『トランプのアメリカに住む』(岩波新書)‥献辞に使ったのが、シェークスピアの『リチャード三世』第1幕第1場のセリフである。‥坪内逍遥から福田恆存、小田島雄志、近年の松岡和子や河合祥一郎までの訳文を比較した‥。それぞれ翻訳時の時代状況や発声法、演劇観の変化が如実に反映されている。坪内訳が歌舞伎の世界を内在された名訳‥、使用した大山俊一訳が政治運動の盛んだった時代を感じさせる一方、小田島役は徹底した口語の世界で文化の時代への変化が生じている。」
★夕陽妄語 ソーニャ・カトー
「加藤周一。世界中の多くの人びとにとって彼は先生であり模範であった。私にとってもそうであったが、しかし何よりもまず自分の父であった。‥加藤周一が亡くなって10年経った今、一人の人間として彼を思い出したい。知識に溢れ、それを伝えようとし、人びととそれぞれの考えに対する愛に溢れ、好奇心に溢れ、そして平和への検診にあふれた人だった、と。」
★豆本作家、松平定信 一戸 渉
★アンジェリーナ・ジョリーという名の羊 新井 満