Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

凍月、冬の星

2019年01月21日 23時04分38秒 | 俳句・短歌・詩等関連
 先ほど近くのドラッグストアに買い物に出かけた。火曜日までは禁足令の出ていた妻であるが、調子がよいようで、簡単な買い物に出てみたいとのことで同道した。

 外は昼間と違ってとても寒く感じた。マスクをして、厚着をしてでかけた。初めは寒さに俯いて歩いた。しかし足もとが明るいので、見上げると大きな月が美しかった。
 本日は満月。雲がどこにも見当たらなかった。冬の大三角(ペテルギウス、シリウス、プロキオン)の横に月があり、さすがにオリオン座も月のあかりで雄大な姿が淡く、弱々しく見える。

★寒星や地に物故せし聖者の数      飯田蛇笏
★地表出る凍月おとを喪へり       飯田蛇笏


 確かに昇ってくる月は音をうしなっている。音を水平線・地平線の下に忘れてきたかのようである。まして冬の、しかも満月であればなおのこと、あれだけ大きな図体をしているのに、静かにその姿を現す。第2句では凍月は間違いなく満月であると私は思う。


順調な回復と思われる

2019年01月21日 20時04分49秒 | 日記風&ささやかな思索・批評
 ようやく完治の道筋が見えてきた。本日の血液検査の結果は、上々。ワーファリンの効果を示す数値もよく、γGTPの値は正常値の上限を下回った。膵臓の炎症を示す数値も正常に戻っているとの診断。造影剤を入れたCT検査を4月1日に行うことになった。しかも次回の受診はCT検査後1週間目の4月8日とのことであった。
 お酒も解禁になった。ただし飲み過ぎないことと、飲んでも食べ過ぎずに栄養過多とならないことを申し渡された。

 さっそく横浜駅のスーパーで吟醸酒のワンカップを2本購入。夕食に1合の6割=6酌ばかりを飲んだ。飲んだのは「加賀鳶」の純米吟醸の1合入り。143日=20週と3日ぶりのお酒はとてもおいしく、胃に染み渡った。
 明日は、残りの4酌と、もう一つのワンカップである「出羽桜」を一口呑む予定。この残りは明後日かその次の日。2合を3日かけて飲むことにした。

 しかし眼科で1020円、市立病院で3030円、薬が両方で6400円と合計10450円というのはとてもつらいものがある。
 眼科は来月もまた通わなくてはいけない。


「佐藤鬼房句集」から 6

2019年01月21日 09時33分57秒 | 俳句・短歌・詩等関連


 句集「瀬頭」から 続き

★梅雨の月あげ道祖神歩き出す
★ものわかりよくて不実や泥鰌鍋
★星雲のくらきところに西瓜種子
★秋草のいづれの草か日暮れ呼ぶ
★解脱など及びもつかぬ隙間風
★みちのくは底知れぬ国大熊(おやじ)生く
★秋味や南部えみしはわが矜持(ほこり)


 句集「霜の聲」から

★首こきと鳴る骨董の扇風機
★霜夜なり胸の火のわが麤蝦夷(あらえみし)
★古暦生きるに厭(あ)くといふ声す
★耳鳴りの月下たどれば被爆の木


 句集「枯峠」から

★整はぬわが脊梁の春景色
★秋暑しわれを死なしむ夢いくたび
★日溜りの落葉溜まりの噴井かな
★飢ゑはわがこころの寄る辺天高し



 この各句集から少しずつ選んだ「佐藤鬼房句集」から私の理解できたように思えるものを選んだ。この「佐藤鬼房句集」に収録されている句を見る限りでは、「半跏坐」と「瀬頭」が私には一番好きな句が多い。私の好みの句集ということなのだろうか。

 第1句、梅雨の時期、晴れた日の月の出た方向に道祖神があり、月の光で照らし出された道祖神が上る月とともに浮かび上がったのであろう。道祖神が歩き出すように浮かび上がった情景だろうか。
 第2句、人と話して物分かりがよさそうな受け答えをされると、ついその人を信じてしまう。しかし相槌を打つのは的確でも、それに沿って動いてくれる保証は何もない。意外と何もしてくれない場合も多い。愛想は良くても不実な人は多い。そんな裏切りに似た行為がわかった時は、ひとりでお酒を味わいながら泥鰌鍋でもつつきたい衝動に駆られる。そう、一人で噛みしめるしかないのだ。
 第5句、「思いもよらず」ではなく「及びもつかぬ」というのがちょっと理解できない。解脱などという立派なことよりも、人には家の隙間風の方が重大な関心事である。
 第6句、作者のこだわったみちのくの風土、そこは人知れぬ大きな包容力を持つ。自然も人の世の在りようも、歴史も、底知れぬ魅力が横たわる。おやじと呼ばれる熊の生息する場所である。
 第7句、蝦夷の後裔がどのような人びとかはすでにわからなくなっているが、古代東北の地においてヤマトの政権にまつろわぬ民(「あら蝦夷」)として扱われてきたことは、東北の地に精を受け、根づいてきた作者の誇りへと転化している。この転化の過程に、作者の徴兵-戦争という生死の体験が横たわっている。
 第10句、権力、権威への抗い、不服従、異議を持続することの厳しさがふと作者にも顔を出すのであろうか。
 第12句、東北地方を南北に走る奥羽山脈と北上山地は東北地方の東西を分ける分水嶺であり、東西の文化の境界である。東北地方はヤマトの政権による分断で統合と統一と国家形成を阻まれてきた。そんな負の歴史も含めて「整わぬ」風土が形成されてきた。だが、春の景色はそんな歴史とは無関係に毎年かならず訪れる。
 第13句、第15句、晩年にも若い頃の戦争体験が人を苛む。