昨日は寒かったが、大寒の本日は暖かく感じるほどの陽気であった。風がなく、日溜りにいると眠気に襲われるような日であった。
★大寒の一戸もかくれなき故郷 飯田龍太
★大寒の残る夕日を市の中 石橋秀野
★大寒や転びて諸手つく悲しさ 西東三鬼
第1句、教科書にも載っていた有名な句。大寒という自然の厳しさと同時に太平洋岸の冬のきりっとした季節の澄んだ大気を表現している。姿勢の正しい人の句であると思わせる。自然の厳しさとそれを引き受けている人の心のきりっとした厳しさもうかがえる。
第2句、厳しい自然をうかがわせる大寒の語感に対して、どちらかというと暖かさすら感じさせる夕日の中で夕食の食材を算段しながら買おうとしている作者を思い出す。決して暖かいわけではなく、そして多分財布の中もゆとりがあるわけではなさそうである。しかしそこには日常の生活に根出した暖かみを感じる。
第3句、大寒の寒さと同時に老いの実感を突き付けられるような現実におののいた作者がいる。老いというものをことさらに突き付けられた一瞬ではないだろうか。若ければ片手もつかずに姿勢を元に戻すようなことも年齢とともに両手を地面について体を支えざるを得なかったのであろう。人目を気にしてとても恥ずかしい思いをしたのであろう。私も実際に体験した。
大寒という季節の語感が人の心に作用するとき、さまざまなバリエーションが奏でられる。暖かみを感じることも、寒さが一層募ることも、そして自然の冷気そのものを受けとめる心情もある。