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チェンジリング (2008/米)(クリント・イーストウッド) 85点

2009-03-04 13:42:50 | 映画遍歴
映像の色合いが未だ好きになれないイーストウッドだが、でも結構慣れてきた。彼の作品はそんなことを言ってる場合じゃない、という僕を叱るような、琴の糸のように張り詰めたスピリチュアルなものを感じてしまう。

映像でぐいぐい観客を引き込んでいくその手腕はとてもじゃないが、他者を選ばせてくれず今や世界中の映画監督でもピカ一だろうと思う。その演出力の持続性はホント驚異的であります。その作品の形態からは、ふと思えばその娯楽性と人間描写の鋭さにおいて黒澤に近づきつつあるなあと思わざるを得ない。

ストーリーは理不尽ではあるがそもそもそれほど娯楽性をもつものでもないのである。ただ息子を思う気持ちが万国共通で、しかもA・ジョリーの秀逸でパワフルな演技で彼女の気持ちが全ての観客に乗り移ってしまうのである。

彼女は、拉致された夫を捜し求める悲劇のヒロインの愛妻の役「マイティ・ハート 愛と絆」、180度変わった「ウォンテッド」で色気ムンムンの男顔負けの殺し屋と幅広い演技派女優だが、今一番旬であり、乗りに乗っていることもあって全て彼女のオーラがめくりめく魅力的であります。彼女がこの役をやってこそこの映画のスケールが大きくなったような気がする。

難解であることの多い作家映画の道を採らないイーストウッドはしつこいようだが現代の黒澤の領域に十分達している。日本でも、世界でも映画関係者はそう意識すべき時期に来ていると僕は思います。秀作!

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