
伊岡の初めての短編連作集。通常僕はあまり短編を読まない。短編は短編で長編と作り方が違い意外と作る方からは難しいものなのだが、その割には読後感が浅いと感じることが多く、だいたいミステリーの短編は今までほとんどパスしていた。
しかし、伊岡の作品は何とまだ3作品しかないのだ。短編云々と言ってられないものがある。そしてこの作品だ。
中味は小学校の臨時教員の、ワルガキどもとの奮闘記だが、各章ミステリー的味付けが施されており、ミステリーとしても十分手ごたえのある出来だ。そして各章に流れる森島先生の心根は深く読者に印象付けられる。短編とはいえ、全体的には一編の長編ミステリーである。
僕はその中でも先生がバイク事故を起こし、病室でワルガキどもに見舞いを受けるシーンで電車の中なのに不覚にも落涙してしまった。こういう経験も実に久しぶり。新作を望むが今のところ3作しか出版されていないとは、、。
何より今心が書ける作家が乏しい。その意味でも彼の作品が待ち遠しい。次作を本当に心から望んでいる次第である。
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