あまり見ないインド映画。題材に惹かれ観賞。出だしからこの監督は映画の文法をきちんと知っているのが分かる。最初の2,3分で観客の気持ちを画面に釘づけにする。いい映画だけに感じる予感である。
通勤電車は何人かがドアから外に溢れ出ている。暑いだろうに事務所の天井は大きなファンがゆっくりと回っている。何か戦前の日本を彷彿させるものがありますね。この親近感というか、なじみ深いものがあります。
弁当箱に入った手紙。その手紙を通して男と女は心の飢えを癒やしてゆく。文通って日本ではすたれた感じだけれど、昔は雑誌の最後の方には文通希望欄があって、それが縁で結婚した人も多かったと聞く。
現代ではそれがメールに取って替わっただけで、僕は心を伝えるものとしての役割は、それほど昔も今も大した違いはないのではないかと思っている。
そしてこの映画でも顔も分からない男と女が文通を通じて愛に触れあい、探り合うことになる。現代でもメールを通して知り合う男女が多いと聞くから、ストレートに心を通じ合える手段としての文通は現代人をも取り込む魅力的なものであると言えるのだろう。
メールでも手紙でも何でもいいのだ。現代人の枯れた心にふと触れる少量の水はやはり何をも変えがたい妙薬なのだ。
映画ではふと老いを感じる男と、ふがいない人生を送る母親を見てしまった女の若さとを対照的に描いて余韻のあるラストだ。
僕はこういう映画にこそ人生を感じるなあ。秀作である。インド映画、なかなか奥が深いぞ。
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