セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2024年 映画 93本、 演劇 71本

レスラー (2008/米=仏)(ダーレン・アロノフスキー) 85点

2009-06-27 15:35:23 | 映画遍歴
お父さん、頑張ってるぜ!と言わんばかりの人生直視映画と言おうか、日本人向き、男のエレジー映画である。

めずらしくプロレスを題材にしているが、そこにあるのはスポーツ映画独特の青春のかけらもない。光と影もない。あるのは盛りを過ぎた汗と苦渋と、しかし不思議と居心地のいい蒸れた空気漂うマットである。

人生の峠を過ぎようとしている。或いはとうに過ぎている。全盛期を過ぎた男たちにはもはや行く道もなくなり始めている。だが、戻れない。脇道を逸れるすべも知らない。不器用だ。器用であればもっと華やかに転進している。今いる場所がいいとは決して思わないが、他に行くところもない。

これって、今世界中の世の中で毎日這いつくばって生きている男たちの生の姿だろう、、。君の姿だ。俺の姿でもある。父親の姿だ。未来の息子の姿でもある。

館内は珍しく男たちで客席を占めている。何かいい映画を見る予感がする。1800円で、しっかりと自分の人生を確認しようとする男たちの顔がいい。画面を見る頭は揺れない。真剣だ。まさしく自分の生き様を見ているかのようだ。

子供にも愛想をつかされ、けれどやはり家族を引き離せない。父親という幻をわしづかみにしたい。けれど、待っている現実におののき、一時の刹那に走ってしまう猥雑で馬鹿な自分。夢なんか、もうとうに捨ててしまっている。出来たらただ小さな暖かいぬくもりが欲しいだけだ。その何処が悪いのか。

、、、、。男の頭にあるすべてがここにあります。女は見んでよろしい。これは男による、男のための、男だけに分かる男の映画であります。サイン会場の老レスラーの後姿は、古今東西、これほどの厳しさと悲しさと老残を描き、世界の名画を探しても早々見つけられないほどの感動度だ。まさにいぶし銀の映画だ。

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