一人の女性の心の綾をじっくりと、時には激しくまた冷静に照射し続ける秀作です。ラストまで一気に観客の心を惹き続ける稀有な映画になりました。
唐田えりかさん、予告編から気になる女優で、実は見る前からそわそわしてた。小西真奈美とソン・イェジンを足して2で割ったような日本映画待望の美女の登場であります。演技はというと、うまいのかどうかわかりませんが、映っているだけで何かありそうな不思議と存在感のある女優です。
冒頭からの15分ほどはデレッとしていて、僕個人としてはちょっと引き気味だったが、男がいなくなってからラストまで、それはもうかなり映画的に息が出来なくなるほど、これはもう完全に近松の世界に舞い跳び、それはまさに情念の世界に浮遊しております。
好きなシーン。川を見下ろすベランダで二人が眺めている。男が「汚い川だなあ」、女が「きれいな川だわ」と女が抒情的な人物であることを示している。大阪で淀川がこれほどきれいに撮られているのも珍しい。
休火山のような女の心と観客が秘密を共有してしまい、心はらはらそれこそ寝ても覚めても、いやがおうにも活火山に邁進してゆくそのエクスタシーと背徳心。そのエネルギーが観客の心を惹きつける。
分かりやすい映画ですし、男でも同じ立場だったらと思わせる憎い演出で、テーマもシンプル、後々心に残る映画であろうと思います。久々に映画館を出るときの気持ちよさを感じました。
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