3時間を超える長尺。休憩なし。キツイけど見るしかない。映画館に行くと、思ったより年寄りが多い。(僕もそうだけど) え、そんな映画なの?(相変わらず内容は知らず映画を見る僕)平日なのに満席。何かの予感。
手慣れたヘルパーを手腕に老人宅を泊まり歩くサワ。最初の話があまりに強烈でかなりぶっ飛んだが、そのうち少々強引なサワが現代に降りてきた受難のキリスト像に思えてくるから不思議だ。
どういう人生を送っていたにせよ、人間は年を取っていくとみんな均一に老人に成り果ててゆく。その老人といえば、肉体は朽ち始めてはいるが、実はみんなそれほど老人ではないのである。(考えていることは普通の若い人とそれほど変わらない。)
しかし老人は(少なくとも映画に輩出している人たちは)ただ生き長らえているかのようなシチュエーションを余儀なくされている。何かもう一つ生きる支え、換言すれば希望のようなものが欲しいと思っているが、諦めている。そのちょっとしたきっかけのようなものが、題名でいうところの「0.5ミリ」かもしれないと思った。
報われない老人はサワと交流することによって何かを見つけて変わっていくが、サワ自身は逆に報われることはない。それは聖職者の生業である。マコトと旅を始めた時、けれどその永遠の孤独者サワは、一人の老人から暖かい施しをもらう。黒子だったサワが実人間に戻る瞬間である。
僕はこのサワの慟哭シーンに一番感動する。聖者キリストもひょっとしたらこんな気持ちで巡礼を続けていたのではないのか。思春期を迎えたマコトの悲しみをもじっくり描き、骨太の作品となった。スケールの大きな作品である。
老人ではみんなすごい演技をするが、坂田が見直すというか絶妙な演技を見せる。光っている。
3時間強の時間も決して長くはなく、本年屈指の快作であった。館内の老人たち、上映中トイレに立った人は実に二人だけだった。みんな実際は元気なのだ、、。
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