北辰斜にさすところ (2007/日)(神山征二郎) 75点

生きていく過程において、特に若いときみんなが同じ場所を見ているような共有空間を経験したことのある人は幸せだと思う。それは部活であったり、クラスメートであったりさまざまだが十分年を重ねてもそのときの思いは宝石のように輝いており、年を経ても常にそのときを振り返ることが多い。
僕もいわゆる青春時代にそれを経験し、社会人なっても生きる上で本当につらいときでも生きる支えになったように思える。この映画は、そんな宝石のような貴重なひと時なのだけれど、たまたま時代が戦時中という状況のために一層明日のない青春時代を送った若者たちの夢を描いた作品である。
野球チームの半分近くが戦死した対抗野球を描いたラストは、後半英霊たちが急に出始めると彼らの想いが観客に荒波のようにどっと伝わってくる。しばし号泣してしまい、アメリカ映画の「フィールド・オブ・ドリームス」を思い出してしまう。時代という壁が彼らの夢を絶ってしまい、無残な青春となってしまうが、今でも彼らの思いは僕たち日本人の心にあるのだ、と言っているようだ。
南の海に日本に戻ってこない彼らの骨と夢が今でも埋没している。作られるべくして作られた映画である。感動作だ。