スタイリッシュな映画センスで驚かせたフォードの2作目です。前作とはかなり印象が変わる映画です。
冒頭の年増巨体ヌードの芸術とやらには圧倒させられる。4,5分続くのだ。現代そのものを描いているんだろうなあ、しつこいぐらいです。美を追求しながら、醜悪なものにも容赦しないフォードはまさに完全芸術家でもあります。
話はこれも途中、一枚の絵として出現する復讐がテーマです。ブルジョアを嫌いながらも、実はそこから1センチも這い出そうとしない嫌な女が主人公です。
随分自己チューで、結婚後も結局ブルジョア男と浮気をし、夫に黙って子供をおろし、その後さっさと離婚してしまう。男は自分の子供を勝手に堕胎させられ、女にとって自由な生活も飽きが来ると、用済みになりさっさと捨てられる。
さて、それから20年ぶりに元夫から作品を読んでくれと刊行前の小説が彼女の元に届く、、。
冒頭の道路上での諍いシーンが怖いんですな。今まさに日本で国民の話題となっている高速事故と同じ設定です。現代の恐怖です。
でもこの小説話には捨てられた男の怨念がじっとりと入っています。この悪魔三人組は主人公スーザンを暗示しています。男に乗り移ったスーザンは妻と娘を強姦し、殺戮します。しかも殺される妻はスーザンそっくりです。彼女自身の精神的な病理状況をも表しているようです。
さすがこの恐いシーンはフォードお得意のスタイリッシュなものではありません。現実感がものすごく出ています。出来たら目を覆いたいぐらいです。でもぐいぐい引き込む強烈な演出です。
小説では、男は犯人たちに復讐を達成し、しかし自分は相打ちに合い、死んでしまう。その後、スーザンはこんな秀作小説を書いた見違えるような魅力的な男に成長した元夫に食指をもよおす。エレガンスにおしゃれをし、レストランで待つ。
しかし男はやってこない。なぜなら、小説で死んだとき、同時に現実の男も死んでしまっていたから、、。
と、まあ、面白い映画ですね。映画ファンはにんまりする映画です。
フォードがゲイだからか、スーザンの兄の悲惨さを伝えたり、バイセクシャルで結婚すれど、ナガティブに生きざるを得ない男をちらつかせたりしています。この辺りはまだフォードと言えど、社会に対する不満があるということなんですな。
前作同様、本作もなかなか映画センスが実によろしい。楽しみな逸材が出てきました。
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