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アンチクライスト (2009/デンマーク=独=仏=スウェ=伊=ポー)(ラース・フォン・トリアー) 65点

2011-03-13 13:36:17 | 映画遍歴
冒頭の超スローの映像は美しく、そりゃあ見とれましたよ。これはさすが大した映画になる予感が、、と思いきや、美人奥さんが我が子の葬式で倒れてからは聖書を題材にしつつ思わせぶりなシチュエーションにはかなりあんぐり。

だいたい、子供がなぜ落下したかって、窓を開けていたからなんで、その時の二人の抱擁が原因であるわけがない。通常の映画だったらそうなるはずなんだけれど、この映画はちょっと屈折してる。母親が無理に我が子を傷みつけていることが明らかになってくる。子供が二人の寝室を覗いているときも母親は気付いていたような感じだったので、さらに奥深く考えてみると窓さえひょっとしたら敢えて開けていたのでは、と思われる節もないではない。

しかし、この映画、本来面白いはずのこの線には延長戦が発展せず、そこでぶっ切れてしまう。

まず、夫が精神医であり、病院から無理に妻を退院させる。そして妻を治療しているうちに妻の心の暗闇に気づいていくといった設定なのだが、この辺りはかなり退屈。シチュエーションを聖書から、エデンの園、キリストとサタンとの対決等すべてキリストを意識しているかのような映像の連続である。しかも、狐の声を発声させたり、顔のない少女を大挙出させたり、一応すべての道具建てはアンチキリストを立脚してはいるが、それは構図上の話であって、内容的にはいかにも乱暴な造りだというしかない、と思う。

【ラース・フォン・トリアー】は無神論者のように見えるが、『奇跡の海』など見ていても実はそうではない節も垣間見え、本作を見て実は非無神論者なのではないのだろうか、と思う。そんなことはどうでもいいことだが、冒頭で言ったように、子供の死と夫婦の営みは何の関係もないはずなので、この映画に関しては、あれほど性的なものにこだわる理由が僕には理解できない。

そもそも性的なものに拘るのは彼の一連の映画からずっとそうであるのでこのことに特に驚きもしないが、この映画に関しては僕には滑稽に思えてしまうのである。でも、予告編からは随分と印象の違う映画であったこと、これは最近の映画では珍しいことで、配給会社の(女性)動員の苦労がしのばれるのであった。(実際結構女性客が多いので驚いた)

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