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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (2007/日)(吉田大八) 80点

2007-07-19 21:15:05 | 映画遍歴
恐らく映画的にデフォルメしてるんでしょうけれど、僕は面白かった。最近、映画を見ながら眠くなる病気に喘いでいた僕がしゃきっとしていた。
漫画的展開ではあるものの、むしろ文学的でもあるのだ。4人それぞれがきっちり描かれており、曖昧さはない。

4人の中ではやはり新人の佐津川愛美が一番甘いかな。犠牲者から略奪者へ変質するその瞬間の演技が弱い。でも、それは演出者のせいでもあるかもしれない。
永作博美はこの役をワクワクしながら演じたに違いない。それほど、彼女の今までとは遠いところにある人物を彼女の美貌に関係なく見事普通に演じ切った。今後の彼女の演技人生を予言できるかのような好演。

問題なのは、佐藤江梨子と永瀬正敏だ。
まず、佐藤江梨子。
演技がまるでダメで性格がやたら悪い役を見た目がまさにそうなのでやりにくかったのでは、なんて僕は勝手に思っているが、彼女は一瞬でもそんなことを感じ取っていただろうか。
でも、問題はそんなところではない。
厭な性格の役をよく演じてはいるが、妹が最後に行った「面白い」人間像が見えなかったのは事実。「面白い人間」の、いわば、押し売りみたいなところもあるが、こういうシチュエーションで面白い人間とは何なんだろうか、、。ここが、よく分からないし、ここが重要だとすれば、彼女の演技は100%でなかったのか、と思ってしまう。

で、いよいよ、永瀬正敏。
日本映画では珍しい、禁欲的な役。(結婚をしながら、姉の存在のない空間で処女妻にしておける男がいるかい?)彼の中の悶々とした鬱蒼としたものの表現が直接過ぎると思う。乱暴さの中に、何かもっと違う何かがあるような気がするのだが、それはない。(まあ、これもデフォルメかもしれませんが、、)
こういう役って、通常浅野忠信がやるんじゃないかな、と思ってしまうが、それで、ホーステールにしてたのかな、、。
浅野忠信だったら、もうちょっと内面的なものを出せただろう、と勝手に思っている。永瀬正敏はちょっとギラギラ感が自然吐露しすぎなんだろうなあ。
でも、4人とも、総じていい演技だと思う。とにかく、2時間、こんなに楽しんだ映画も珍しいからね。今年の日本映画でも、かなりの問題作でしょう。

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