お気に入り監督、ジャ・ジャンクーの新作。またまた二人の古臭い恋愛ロードを軸に中国の20年間の歴史の営みをじっくり描く。
この二人のくされ縁恋愛は映画でも今までかなり描かれてきた。日本映画の「浮雲」なんてその代表作だし、洋画に至ってはむしろありすぎて上げられないほどだ。
それほどこの男と女の恋愛というのはいたって簡単で、しかしひねくり出すと途方もないほど迷路に入り込む。人生って、そんなものですね。もうそんな浮いたことには関係ないと思っている私自身でも日常的に妻との諍いは存在する。
で、今回のこの男の心情はというと、これがまた古いんだよなあ。まさに高倉健サン的世界がはびこっています。やさぐれ者の男が危ないところを女に助けられるという不具合を経験してしまったことから、もうこの女とは会えないと思うのだ。
こういう心根は女には分からない。一方男は説明しない。説明するような男ではない。だからまた長く別離の時を迎えるのだ。だが、男が大病を患って、家族から捨てられると女は男を引き取り、介護する。けれど、そもそも女に助けられ生きていける男ではないのだ。
こう考えると、男と女には昔、流行り歌であったような「男と女の間には深くて暗い河がある。誰も渡れぬ河なれど、、」なんて歌詞が思い出されます。
そう、時代に取り残される人間像を常に見つめてきたジャンクー、今回も暗い空に吠えております。実にいいタッチです。
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