冒頭の連続幼児殺人事件の偽装から始まるこの映画。悪徳警官モノといってしまえばそれで終わりだが、どうも主人公がぐにゃぐにゃしていて気持ちが彼に入って行かない。そのためか、主人公がどんどんどつぼに入っていく展開も心が離れていく、、。
これだけ登場人物が全員悪者といった設定はある意味、キタノ映画を思い起こさせるが、この映画、そのたたみつける演出は見事だが、キタノのような美学には乏しい。それはキタノのような瞬時の滅び去る美を捉えていないからではないか、と思う。
韓国映画お得意の、人間に土足で入って行く怖さがあるはずなのだが、【ファン・ジョンミン】というアンチエリート警官の心の闇にほとんど入って行かないから、観客は主人公の警官をただ風景化していることにとどまってしまう。
彼の家族なり(わけのわからん妹夫婦はいるが)、恋人なり、彼の心象風景がこの映画には不在で、観客たる僕にそれは伝わってこないのである。そうするとどんどん蟻地獄に入って行く展開さえ僕の心からどんどん離れていくのである。
面白かったのは、無理な冤罪事件の真相であろうか。これだけは他の映画にない斬新な設定で多少なりとも感心するところはあるも、あの信頼すべき部下まで殺害したあげく、あんな証拠隠滅で通るはずがないと思わせるのも少々白けてしまう。
そもそもあの終わり方では信頼すべき部下が悪徳警官のままで浮かばれないのでは、と同僚の行為も解せぬし、また鼻白んでしまう。とか、いろいろ吠えておりますが、2時間退屈しなかったのも事実であり、【リュ・スンワン】の演出力には見どころが多いと思った。
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