ある人物の巨額の遺産相続にかかわる物語だ。子供時代のキャンプファイアーに参加した5人に「あること」を思いだした一人に全額それが相続されるという。そんな奇抜な設定のミステリーにやはりふとその本を手にしてしまう人が多かったはず。
ところが300ページぐらいの小説なのに読んでも読んでも人が死なない。まあ人が死ぬだけがミステリーじゃあないですが、ちょっとそこらのミステリーではないことにそのうち気づくことになる。
ラスト近くに急に犯人側からことの顛末を告げられる。ここからが本当に解決編になるのであるが、本格もののセオリーからはこれは大違反。とにかく今まで何の伏線も出さないで、犯人側から一方的に事件の真相を告げるというのはいかがなものか、と少々目を怒らして読んでいたが、このラストの清涼感はたまらなく不思議な陶酔感がある。
実は僕はこの終わりがとても気に入ったのである。この文芸的なラストこそひょっとしたらこの小説の一番ミステリーなところで、これを作者は本当は書きたかったんだなあと僕はほくそ笑む。僕はこのラストで大いに加点させていただいた。大いに人に褒めたいミステリーでもあります。
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