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TOKYO! (2008/仏=日=韓国=独)(R・カラックス他) 75点

2008-09-11 13:48:24 | 映画遍歴
外国人から見た東京の素朴な姿を現代人を通して自由に見る、というテーマなんだろうけれど、それぞれ面白いものを見せてもらった。

3人とも東京というより大都会に閉塞感を持っているのが共通している。狭い。行き場がない。太陽はあまり射さない。なにより自分の居場所がない。暗い日常。

これって、立派に今生きている現代人の、我々の日常以外の何者でもない。今や世界が縮こまってニューヨークでもパリでもましてやソウル、東京でも環境は全く同一だということなんだ。そういう意味では各国の代表監督が東京を通してというよりそれぞれの現代感を描いた面白い試みだと言える。

1話。自分が何故生きているのか模索する女性の話は身につまされる。生きる糧を捜して人間は生きているわけではないが、それでも生きていく上で、何か希望といえるものがなければ生きるのは苦しいことの繰り返しだろうとは思う。そんな、おぼつかない日常の不安を一人の女性を通してぐいぐい描いていく。

彼女の空っぽになってしまった胸の空洞を直視するのは実にきついものがあった。ましてや彼女の肉体が木に変質し椅子になってしまう過程は哀しくてたまらない。この切ない系の話は今や世界中の流行なのでしょうか、、。それでもやっと自分の居場所を見つけて落ち着く辺りはぬくもりさえ感じてしまういいラスト。ほろっとさせられる。

2話。東京のマンホール下に棲息する異人類のハナシ。不思議なテンションを併せ持つが、何だか一番説明不足気味の挿話でもある。一応一般市民に迷惑をかける人間なのでテロリスト扱いされるんでしょうが、現代に蘇る新しい神の出現といったイメージも残る。不思議な印象を残す挿話であります。

3話。引きこもりのハナシだ。しかも、11年引きこもっている中年男のハナシであります。ところがさすが 香川照之と蒼井優、いいラブストーリーにしてくれています。ほとんどセリフのない蒼井優、表情だけの演技で、もう完璧、絶妙です。
この話にはブラックがありまして、11年後に外に出た町中、みんなが家に引きこもっているというオチは怖かったです。秀逸。

全体に、こういう映画を見てしまったら、これからの人類、どこに行くんでしょうか、とお年寄りの僕でさえさすが気になり始めます。

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2 コメント

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Unknown (バオバブ)
2008-09-11 23:26:43
2話のカラックス作品にはまいりました。
ポーラXの時もそうだったんですが毎回気分が悪くなってしまうのです。冷や汗と吐き気を覚えてしまうくらいの衝撃。
あのおじちゃんが夢にでてきたらどうしてくれよう~、
絞首刑の場面は倒れそうになりました。
なのに、なのに、カラックス作品は毎回観てしまうから不思議です。
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暑い夏もそろそろ過ぎようと、、 (ヌートリアE)
2008-09-12 09:38:58
バオバブさま、おはようございます。
ご無沙汰しております。暑い夏はいかがお過ごしでしたか?
久々のカラックスの映画、面白かったですね。あの、いつも画面を独り占めしてしまうドゥニ・ラヴァンを見られただけでも見っけものと言えるんじゃないでしょうか、、。
3話の中では一番意味深そうな挿話でしたね。さすが、カラックスです。
オムニバスものでもじっくり描きこんでいるこういう映画は見やすくなかなかのものですね。
それでは、また。
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