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聖徳太子: 実像と伝説の間(石井 公成 著) (春秋社 2016) 85点

2016-07-30 09:03:57 | 読書遍歴

最近聖徳太子について、大山氏が、創作された架空の存在であると指摘したことがクローズアップされている。教科書に至っては聖徳太子という表現を使用しないものも多いと聞く。今受けている口座の先生がこの本が一番まともです、ということだったのでさっそく読んでみた。

まあどう考えても厩戸王という用明天皇の皇子は実在していたわけであり、このことを大山氏も否定しているわけではないと思う。日本書紀が作成された8世紀ごろはまだ太子が亡くなって100年ほどであり、そもそも存在していた人を存在しなかったというのは(架空であるというのは)無理があると思っていた。

という視点から読み始めると、240ページぐらいの読みやすい本なのであるが、結構じっくり読んでいかないと先が進まない。それほど煮詰まった文章が続いてゆく。

印象に残ったのは2点である。

①太子の身内(皇族、蘇我氏等)で天皇の位置を巡って、すさまじい同族殺しが行われていたことです。

母方の叔父である穴穂部皇子、崇峻天皇の暗殺、身内の近すぎる近親婚、母親穴穂部間人皇女に至っては再婚の相手が元夫用明天皇の息子田目皇子である。そしてこの混乱期に叔母の推古が蘇我馬子を後ろ盾に即位するのである。

②太子の息子山背大兄である。太子の死後蘇我入鹿により滅ばされる人物であるが、この大兄という名で、皇子でないのは山背大兄だけらしく、相当の力を有していたらしい。東国への影響力もかなりのものであったという。(壬申の乱の大海人を思い起こさせる。)聖人のように自死したイメージが強かったが、かなり政治的にも関心があったようである。

まあ、ここまで詳しく太子のことを書けば大山氏の架空論は反論がそろそろ出てきますでしょうか。とにかく凝縮された本なので、何回も再読する必要はあろうと思います。


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