
息子が早稲田に受かっているのに東大でないとだめだと予備校通いさせているキャリア警察官。それがこの小説の主人公だ。そのエリート丸出しの、官憲の臭いが強い主人公に辟易し読むのをやめようと何度思ったかしれないが、その息子が何と麻薬に手を出してからというもの、主人公の脳裏がはっと投影して来て実に親近感さえ湧いてくるのであった。
そしてそれから本当のこの小説が始まるのだ。この本の奇怪なところは何と一応設定はミステリーであるにもかかわらず、しかも連続殺人事件が主体であるはずなのにその犯人像が全く語られないということだ。
これは官僚機構の物語である。そして友情の物語でもあるし、家族の再生の話でもある。実に重く、すがすがしい作り込みで、久々にページを繰る手の軽やかさに我ながら驚く。秀作である。また好きな作家が一人増えました。
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