やはり山田洋次、いまだ演出は健在なり。吉永、二宮、黒木そして加藤を布陣してこれ以上ない演劇的世界を構築する。当時の時代考証にも執念を持ち、戦争そのものを暗く深い所より引っ張り出し、露呈させる試みは一応成功したか。
清冽な坂本龍一の音楽がこの映画のテーマをさらに掘り下げる。戦争のむごさ、生き残るつらさ、それでも生きてきた当時の日本人の真摯な生活描写。見ごたえがある。映像にはめられたカットに無駄が一切ない。山田節がうなっている。
しかし、山田映画に解せない部分もある。
1.息子の恋人を町子と呼び捨てにする母親。(長崎ではそうなのか。)
2.厚生省分局に行かないと戦死したのかどうか分からないのか。(通知は来ないのか)
3.運命についての考察で、自然災害と人災は違うと強調していたが、それらを踏まえて全体的にそれも人の運命なのではないか。
4.母親が息子を諦めたから息子が現れたのである。お迎えに来たのではないはず。ただ単に後者であれば、この崇高な映画の本質を損なう危険がある。
敢えて書かせていただいたが、4以外は作品的にそれほど影響を与えるものではない。でもあのラストシーンは少々驚いた。孤独死が本人の思うところと他人のそれとは全く違うものだという一つの考察を提示しているのではあるまいか、とも考えたが、そうでもないですね、、。
でも映画的にはやはり見せてくれますね。山田洋次、まだまだ映画を撮れるよ。84歳ですよ。凄いよ。
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