つい見てしまうイランの巨匠と呼ばれるファルハディ作品。今回は随分と通俗的な事象をテーマに、人間の行動の闇を探っている。
いつも思うのだが、彼の作品はイヤミス系がたっぷりで、切取り部分にそれほど意図的テーマを持たず、人間の卑近な営みをこれでもかと描いている。とても映画作りがうまく、観客は気づくともう彼のペースにはまって映像を眺めていることに気づく。いわゆる映画の魔術師である。
それでも今回は刑務所から2日間の休暇をもらい娑婆に出てきた男の物語である。彼は何としても刑務所に戻りたくないのである。そんな彼に社会一般の津波が押し寄せては消え、さらに押し寄せる。映画は、一人の男のあがきを見せつけて、結局は元の木阿弥に戻るところで終わっている。
ラストの映像、日常と非日常との映像対比の見事さ。日差しは娑婆の方が随分と多い。見事なラスト映像である。けれど、ファルハディは余裕がありすぎると思う。スクリーンの奥から彼のニタリ顔が見えるようだ。
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