ボスの情婦を寝取ったからって、セメント詰めにして海に沈める、なんてそんな面白い荒っぽい出だしは思いがけなくいいよ。
その後の偽映画の展開は意外やうまく帳尻が合って破綻もなく、且つ佐藤浩市の余裕の演技っぷりでぐいぐい画面を引っ張っていく。あちこち散らばめられた映画への愛情が宝探しのように楽しいし、2時間を越える長さにもかかわらずだれるところがなかったのは褒められていい。
ラストの波止場での活劇シ . . . 本文を読む
「神の不在」をストレートにテーマ化した映画ではないだろうが、最近はこの手の映画は途絶えていたと思う。2時間を越える長丁場の映像ではあるものの、持ち応える映画の力はさすがであり、十分観客の思考を回転させてはくれるが、完成作とは思えない苛立ちが残滓として付着し浮遊しているのも感じられる映画ではある。
シークレット・サンシャイン、女が子供を連れて元夫の生地に移り住んだ地名の英語名であるが、女が神の存在 . . . 本文を読む
最近流行っているかのようなまたまた死刑囚を題材にした人間ドラマだが、あまりに描写が素晴らしくいい映画にだけ感じる心にしみわたる感覚をひたひたと感じる。
明日のない死刑囚も、日常をただ怠惰に生きて来た刑務官も、残されている時間の多い少ないは別にしてその日を生き続けている。我々も切ない日常を生き、たまには映画館で人の違う人生を見ている。かといって、日常の空間が急に変化することもなく、ただ時間を積み重 . . . 本文を読む
DVD上映で見たので何か落ち着かなかったが(ちょっと損した感がする)、韓流を超えてダブル不倫のハナシであります。結婚して3,4年ぐらいで倦怠期が生ずるのかどうか知らないが、設定もセレブ族だったりものすごく背伸びしているので、現実感があまりない。
でも、だから逆に安心して見られるんだろうけれど、作り物としての印象が強く、この両カップルは気持ちのほとばしりというものが感じられなく、僕の心に食い入るも . . . 本文を読む
今週見た映画で不思議なことが起こった。日本映画「接吻」と韓国映画「ブレス」はくしくも死刑囚との愛の物語。それぞれ相関することもあり興味深い。
また「山のあなた」(これは先週見た)と「丘を越えて」は同じく昭和初期の時代設定で、戦争突入前の一瞬だけ明るかった時代の話。
たまたまこの4作を最近見たので、何か偶然とはいえ面白かった。
特に僕はギドクの熱狂的なファンなのでもう見られるというだけで心が騒ぐ。 . . . 本文を読む
ギドクの新作。それだけで心浮き立つ映画心。これだけは本当の映画ファンでないと分からないであろう、、。
映像への入り方、漂うリズム、集中力、シンプルなテーマ、一つ一つが僕の感性に合っている。彼の映画のテーマは考えたらほとんどいつも同じなのだが、それでも繰り返し見てしまう。その映画作家性と共に、生きている感触というか、瞬時の営みがとても愛おしく感じられ、見入ってしまうのだ。
ハナシは夫の浮気で自分 . . . 本文を読む
菊池寛を取り巻く人間像から、また昭和初期という古き良き時代へのオマージュから昭和が遠い過去になっていることを強く実感させられる作品だ。
しかし、CGがらみの映像、モボ・モガの衣装だけで遠くなった昭和を描ききれるものでもなく、本来そこには昭和の時代を生きた菊池寛らの生きた血と肉が映像に投影されていなくてはならないはずであります。
例えば、文学における芸術至上主義と大衆との兼ね合いが劇途中で論じら . . . 本文を読む
面白い映画であることよ。ハナシはそこらに転がっているものではないけれど、あっしには関係ないと無視できるものでもない。異端の、異端中の話ではあるけれど、人間が生きていくうえで気になる問題に触れていることは明らかだ。
まず、男。鍵の開いている家を探し一家殺戮を果たす。家庭の主婦を殺す。家に潜み学校帰りの女の子を殺す。さらに夕方まで滞在し仕事で疲れた夫を殺す。すべて無造作に後ろポケットに携えた金槌で無 . . . 本文を読む
毎日利用しているはずの地下駐車場が変質ストーカーのために監禁場所になってしまう(ここがミソなんでしょう。)終わりまでの一気のサスペンスクライム映画だ。
登場人物が少なく閉塞的ともいえるシチュエーションなのでいわば密室心理劇ともいえるが、ねちっこい演出と主役の二人の演技が迫真的で意外や盛り上がってしまう映画だった。退屈しのぎの女性のボディ&服装というサービス精神も旺盛で、この監督、エンターテイメン . . . 本文を読む
コメディーではあるものの当時の生活感がふんだんに随所に見られ、見方を考えればシリアスものとしても通用する社会風刺映画でもある。
山田洋次のデビュー作としてしこぶる興味があったが、二階の借間に仮住まいする借家人との絡みを通して庶民の生活光景が鮮やかに描写されている。もう少し掘り下げていたらデシーカ風にもなったろうに、やはりコメディを目指していた山田はそうは描かなかったところにこの映画の意味も膨らむ . . . 本文を読む
秀作が続く東野圭吾、たまに息を抜き通常の恋愛小説なるものを書いてみたかったのかな。こちとら、ミステリーの醍醐味を今回も期待しておりましたので、その分少々がっくりもしましたが、出だしからの不倫への気持ちのどよめきはさすがのもので、前へ前へ進めるものがありました。
この不倫劇がラスト近くまで続いたのでかなり驚愕してしまったが、ラストの謎解きはまあ想定内でありました。でも、いつも僕たちをはらはらさせて . . . 本文を読む