物語と感情移入3:主題の理解

2005-12-03 18:19:17 | 感想など
ここまで来れば「こころ」の主眼は理解されるはずだ。つまりそれは、「人は理解し合えないし、それどころか自分のことすら理解できない」というテーマであった(これは「行人」にも繋がる)。言葉にすると鼻で笑われかねないが、それをエゴ、自殺、懊悩、無気力、心中といった人間の暗い部分や徹底的に理解し合えない人々を描くことで不気味な説得力を持たせながら主張しているのである。 さて、そういったテーマを理解した上で . . . 本文を読む
コメント

物語と感情移入2:「こころ」を事例として

2005-12-03 17:30:39 | 感想など
まずは、以上のような混沌とした現実をしっかりと念頭に置かなければならない。その上で、虚構の方に話を戻そう。先に私は、「感情移入のための演出」という反論について言及し、その価値を認めた。実のところ大半の物語について、この演出が多分に利用されている。その理由は、一にも二も無く「その方がわかりやすい」からである。物語というものが商業と結びついている昨今、これは当然のことと言えよう。 だが、あえてその演 . . . 本文を読む
コメント

物語と感情移入1

2005-12-03 16:17:09 | 感想など
※この記事は「理解と共感」「反体制という呪縛」の内容を前提に書いている。 二言目には感情移入、感情移入と繰り返す感想やレビューが多すぎるように思う。確かに、そういう読み方が許される、あるいは要求される話もあるだろう。例えば童話などは、単純な構造であるが故にそこへ自分の体験や考え方が投入できるという特性を持っている。 しかし当たり前のことだが、虚構の世界の住人は、本を読んでいる私ではない。別の出 . . . 本文を読む
コメント