「自己中心的」ということ

2014-10-13 18:08:14 | 感想など

人には労せずしてすべてがうまくいく時期があるかと思えば、何をやってもうまくいかない時期もある。どんな人も、つねに賢人でいることはできない。(by バルタザール・グラシアン)

 

突然の話で恐縮だが、私は超がつくほどの「自己中心的」な人間である。たとえば

1.自分の都合のいい時にしかその行動をしたくない
時間などを合わせる気がないので、テレビを見たり映画館に行ったりしない 。風俗もある意味同じこと(ヤりたい時にしかヤらない)。

2.他人と行動するより、一人で行動して新しい発見をしたい
より正確にいえば、コンテンツ>コミュニケーション志向。なので自分の持ちえなかった視点を提供してくれる人と行動することはむしろ望ましい。とはいえ、相手が浅薄な印象を事物や作品に対して抱いていたケースでも、その人へ説明するために自分の思考をめとめる必要にかられるため、結果として自分の利益になるので是と考える場合もある。

 

といった具合に。ところで、「自己中心的」と聞くと多くの人は自分のことしか考えないだけでなく、傍若無人に振る舞う人間を想像するのではないかと思うが、私はそのイメージに違和感がある。というのも、自分のことを徹底的に考えたとしても、あるいは考えるがゆえに、むしろ他人のことまで考慮せざるをえなくなるからだ。

 

たとえば単純な話、一人でやれる仕事には限りがあるが、複数で協力して行った場合にはより大きな成果(相乗効果)を上げられることがしばしばある。つまり、他者の助力を得やすい状況を作りだしておくほうが自分にとっても利益になるわけだが、そうすると他者との分担や指示の出し方の工夫はもちろんのこと、他者との接し方や人望が重要になってくることは言うまでもない。そのため、相手を叱りつけるより、多少意識して褒めたほうが良い場合がある。本人のモチベートがupして仕事の能率が上がったり、本人との関係も良化して支持を聞いてくれやすくなったりすれば、連携もたやすくなって説得に無駄な労力を割く手間が省けるからだ。このようにしてwin-winの関係を築けることが、自分の利益になるという点におそらく異論はないだろう。というわけで、「相手を褒める」という行為が自己中心的だと感じる人は少ないだろうが、徹底的に自分を中心に考えた場合でも、そのような行為はむしろ合目的的なものとして積極的に選択しうるのである(まあ相手が、理解力に乏しいことを含めて、極めて無能な人間ならばこの限りではないが)。

 

あるいは、いざ自分が苦境に立った時のことを考えてみるとよい。先日の御獄山の噴火は自然災害という大きな例だが、不慮の事故や仕事のミスなど小さいことでもしばしば予測しなかった事態に陥ることがある。その時、もし仮に自分のことしか意に介さない振る舞いをしていたならば、そうでない時よりも助力してもらえる可能性がはるかに低くなってしまう(もちろん、「まさかの時の友こそ真の友」ではないが、たとえ敵を作らないよう振る舞っていても、苦境になれば他人はしばしばその人を見捨てたりするものであるのだが)。要するに、人が助けてくれる状況にしておいた方が、換言すれば背中をさらした時に刺されるより支えてもらえるようにしておいた方が、予想外のリスクを縮減できるのであって、これまた「自己中心的」なればこそむしろ合理的な行動と言えるのではないか。

 

以上繰り返すなら、「自己中心的」であっても、否むしろ徹底的に「自己中心的」であればこそ、自分の利益のためにも他者に配慮をした行動をするのが合理的・必然的と言わざるをえない。そしてそのような見地に立てば、冒頭で書いた「自己中心的」のイメージ(それはいわゆる「ジコチュー」と表現する方が適切だろう)は実際のところ「自己中心的」というよりはただの「幼児性」と呼ぶべきものだと私は思うのである。

 

[追記]

自らの理性に基づいて合理的選択を重ねていたとしても、それが誤っていたり、かえって悲劇・惨劇を招くことがありうる。そのような、人間の自由意思ではどうにもならないような逆説的事例ないしは人間の必謬性を念頭に置いているという意味においては、私の思考様式を「自己中心的」とは呼べない、と考える人もいるかもしれない。それはともかくとしても、「合成の誤謬」といった概念も比較的人口に膾炙している今日、そのような認識を持たない人間はそもそもただの愚鈍だと私は思うのである。なお、賢明な読者諸兄はすでにお気づきのことと思うが、本文で述べたような思考態度では決して「空気」に抗うことはできず、ゆえに別種の価値(判断)が重要となってくることも指摘しておきたい。

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