プレイと信頼関係、あるいは性的嗜好の背景:夏芽みのりとかなえ先生の対談より

2022-08-24 11:11:11 | 感想など

 

 

プロの腹パニストである夏芽みのり×犯罪心理学や社会病理学を解説するかなえ先生のコラボ動画が上がっていたので、早速紹介しておきたい(色々紹介がぶっ飛んでるが、細かく説明すると長くなるのでここでは割愛。ちなみに前者のみの姉はこちらの記事、後者のかなえ先生はこちらの記事ですでに取り上げている)。

 

上手く緊張をほぐしながら、距離感を測りつつ具体的事例と研究紹介をわかりやすくポップに伝えてくれるかなえ先生の語り口調+みの姉の傾聴力と適切な合いの手(二人とも大人だなあ・・・)が光る配信で、最後は「上手く相手に甘えていきましょう」という何ともほっこりな結論で終わりましたとさとw

 

ちなみになぜこのタイミングでこの対談を紹介したかと言うと、

1.性愛と宗教の承認構造における類似性と身体性の問題

2.DVなど含む毒親問題

3.正しい知識共有を含めた性愛や障害の背景理解の重要性

4.Vtuberという存在だから担いやすい役割

といった形で様々なこれまで取り上げてきた問題を橋渡しする内容だと思ったからだ。

 

具体的に言うと、1は「映画はカルトをどう描いてきたか?」で取り上げたこと、2は「なるべく小さな幸せと、なるべく小さな不幸せ:とある毒親サバイバーたちの話」、3・4は「Vtuberの『身近さ』がもたらすメリット:セーフティーネットにつながる一つの道筋として」につながっている。

 

一個一個説明すると長くなるが、1はアイヒマン問題などとも連動して語ることができるし、2は「しつけ」という名の暴行・パワハラ・モラハラ、3・4はVtuberという生々しすぎず、かといった完全なフィクションとして遠い存在でもないというポジションの有用性、といった補足はしておいた方がよいように思う。

 

特に3・4は、今進んでいる社会の多様化・複雑化の中で不信と憎悪、排除の傾向が強まる可能性が高い中、自分とは異質なものに触れるハードルを下げ、その結果「免疫化」につながるという効能が見込める、と思っている(まあ一歩間違うと過剰な単純化と決めつけにもなりうるから、安易に肯定できない部分もあるが。ちなみにこれは覚書として雑然と記事にしたが、いずれまとめたいと思っている)。

 

「いやいや、それぞれの立場を明確にして説明すればええやん」と思う向きもあるかもしれないが、一橋大の事件や『正欲』という作品のメッセージ性からもわかるように、当事者にとってアウティングというのはしばしば暴力性を持つものであり、相手にとっても「多様性の承認」というお題目は理解しても、それを受け入れることは必ずしも楽なこととは限らない(極めて基本的な話だが念のため確認しておくと、例えば同性愛者に異性愛嗜好を強制するのが暴力的であるのと同じく、異性愛者に同性愛嗜好を強制するのも暴力である。あくまで「他人に危害を加えない限り何をしてもよい」というミル的な前提の元、他者のスタンスとして承認できるかという話である)。

 

とまあそんな具合。


この他にも、今の話から「性=不真面目・隠ぺいすべき」というゾーニング自体が時として大いに問題であることと絡めて(少なくとも「無知であることが正しい」というのは完全に間違っている)、本当はこのブログのカテゴリーを全て無くしてしまいたいと思っているという話にも関係してくる(読者の便宜上無理やりカテゴリーを分けてるが、実際は今回の記事のように截然とテーマを区分できないことの方が大半だし、そもそも現状で6000弱の記事がシームレスに存在していることにある種愕然とすることが、「コスパ」志向の件と対照的という意味=人間の理解不可能性においても「正しい」反応なのでw)。

 

あるいは、以前「虜2」という18禁ゲームに触れた際に、当時プレイしていて全く興奮せずただパラメーターを管理するために調教をこなす作業ゲーとなり、ちっとも自分には関係ない性癖だと思ったと書いた。しかし、『虜』の小説版ではプレイにおいて非常に様々な配慮が必要(例えば排泄系のものは一歩間違えると命に係わる)と知り、それが信頼関係に基づいた「ゲーム」ということを理解したのも、今回の腹パンと信頼関係の話に結びついてとても興味深かった(余談ながら7年ほど前にフィストの話を書いているが、それをそもそも知ったのは「虜」からである)。

 

とはいえ、ここらは深堀りするとまた長くなるので、今回はここまでとしたい。


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