こういった解説動画を見て改めて思うのは、外的要因も含めた構造分析こそが重要であり、ゼロ百の二項思考は不毛の極みということだ。
例えば日本の製造業について、「いらない機能をやたら付け加える」という問題が指摘されているが、これはいわゆる三種の神器が家庭に普及してフォード式の時代が終わりを告げた以上、どういう付加価値をつけるのかというポストフォード式の戦略になること、自体は必然性があった。
しかし、その付加価値が、いわば現場のメーカーオタク的な、あるいは他社との競争意識に基づいたマニアックな機能追加でしかなく、全くと言っていいほど顧客目線に立っていなかったから、失敗したのである。
ついでに言えば、高度経済成長を終えてバブル経済をた日本が競うべきはアメリカが目指すようなIT産業だったりしたわけたが、むしろ「ものづくり大国」として途上国と争うことを選択したので、そりゃあ人件費などの面から言っても価格競争で勝てるわけがないのは至極当然の話であった。
もう少し話を広げて仮に「日本的組織」みたいな話をするなら、例えば日本社会は「空気を読む」と言われるようにハイコンテクスト文化とされるが、これは人の流動性が低い江戸時代の村落共同体ならむしろ無駄なものを省くという意味で合理的と言える。
しかし、人の流動性が高まり価値観が多様化した(=共通前提の多くが崩れた)社会では、「言わないとわからない」のでそのようなコミュニケーション様式が非合理的なものとなるのである。よってそのようなやり方を現代において「昔はこうだったから」という理由で押し通そうとするなら、端的に言って愚昧の極みである。
この動画では日本企業の組織的特徴の強みや弱み、あるいは外的な政治環境の変化が国内の経済政策に与えた影響など、様々な側面から日本の電機メーカー衰退の構造を説明しており、こういったアプローチは他の分野について考察する場合でも極めて重要だと感じたので紹介した次第だ。
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